特定の宗教団体に所属しない無宗教派は日本人の5割以上とみられる。それに伴い葬儀も簡略化されていく流れにあり、無宗教派に向けたエンディングサービスへの需要が高まっている。
無宗教派の台頭で変わるエンディング市場と寺院経営

JNEWS会員配信日 2017/10/20

 日本の葬儀一式にかかる費用は平均で約120万円と言われている。遺体の搬送から通夜、告別式、火葬にかかるまでの費用で、その程度の金額はかかってしまう。しかし、金銭的な負担はそれだけではない。仏式で葬儀を行うのであれば、僧侶の読経料や戒名を付けてもらうのに約50万円。さらに、そこから寺院との付き合いは永続的なものとなり、四十九日、初盆、一周忌法要、それが過ぎても故人を供養していくための費用はかかる。

しかし、少子高齢化の中で、子孫に無理な負担はかけたくない、子供がいないため先祖の墓を供養してくれる人がいない等、それぞれの事情から、宗教を変えたり(改宗)、無宗教になる人が増えている。

そもそも日本人は、特定の宗教への依存が強い国民性ではなく、先祖からの菩提寺はあっても、正月には神社に初詣へ行くし、クリスマスも楽しんでいる。しかし“信者”という意識は薄いのが特徴である。

世界の宗教問題に詳しい米シンクタンク、ピューリサーチセンターの調査によると、日本で、特定の宗教団体に所属しない人の割合は、2010年の時点で57%だが、2040年には65%に増えると予測されている。宗教への依存が薄らいでいくのは、他の先進国にも共通した傾向となっている。背景には、家族構成の変化や、ライフスタイルの多様化により、宗教的な慣習や制約に縛られない生き方を求める人達が増えていることがある。


 ※出所:Future of World Religions(Pew Research Center)

日本では8~9割の葬儀が仏式で行われているが、従来のような仕来り通りに行えば、数百万円の費用がかかり、少子化で兄弟が少ない中で、子供に墓の維持をさせていくことは大きな負担になってしまう。そこで、無宗教派を中心に、従来の形式にとらわれない合理的な供養のスタイルも支持されるようになってきている。彼らの中では、身内だけで葬儀はしても、菩提寺とする寺院の檀家にはならないことや、お墓を持たないことも選択肢になっている。

高齢社会が進行する中で、死亡者の数が増えていくことは間違いないが、それに比例して、葬儀や墓石販売の市場規模が成長しているわけではない。故人の見送り方や供養の方法は、急速に簡略化していく傾向にあり、葬儀の契約単価は年々下がっていく。それに伴い変革を求められているのが寺院の経営であり、無宗教層をターゲットにした、新たなエンディングサービスが求められている。そこでは、起業家と寺院との連携により新たなビジネスを立ち上げる動きもある。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます記事一覧 / JNEWSについて

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