AI時代に進化する著作権の価値とデータマイニング
JNEWS会員配信日 2017/7/8
世の中で財を成している人には、その収益構造で共通点が多い。収入の内訳は、大きく分けて「労働収入」と 「権利収入」の2種類があり、権利の価値に着目することが成功への礎になる。たとえば、不動産の家賃も権利収入 の1つだが、物件を取得するのに多額の資金がかかり、固定資産税やメンテナンスコストもかかることから、実質的 な利回りはそれほど高くはない。
それよりも魅力的なのは、無形の知的資産から生み出せる権利収入である。具体的には、小説などの原稿、音楽、 写真や映像などには著作権があり、二次的な使用を認めることにより、権利収入を得ることができる。
特許は、特許庁に申請手続きして、独自性が認められてなければ登録できないのに対して、著作権は作品が創作さ れた時点で権利が発生するため、クリエイターが生み出す作品は、その出来映えとは関係なく、すべてに知的財産と しての価値がある。
紙出版が全盛の時代には、作品から著作権収入を稼げるのは、プロのクリエイターに限られていたが、ネットで作 品を自由に公開できるようになった現在では、プロ・アマの区別なく、作品を収益化することが可能になっている。 写真が好きな人ならば、「PIXTA」や「フォ トライブラリー」 などのストックフォトサービスに、自分が撮影した作品を登録しておくだけで、 Webや広告で利用したい事業者から購入してもらえる。著作権は消費されずに、複数から権利収入を得られるのが魅力である。
著作権協会国際連合(CISAC)によると、世界で著作権使用料が徴収される市場規模は、2007年の 66億ユーロ(約8,448億円)から、2015年には86億ユーロ(約1.1兆円)に伸びている。コンテンツ別にみた内訳は、「音楽」のシェアが最も高くて86%を占め ている。これは裏を返すと、著作物の権利が収益化できているカテゴリーは少ないのが実 態で、著作権ビジネス全体 では未開拓の領域が多く残されていることを意味する。
著作物の使用形態は、メディア媒体の進化によっても変化するため、使用ライセンスの徴収方法も、新たなルール 整備をしていく必要がある。アナログのレコード、テレビ・ラジオなどの放送、CD、DVDレンタル店など、新し い媒体が登場する度に、著作物の合法的な利用体系が議論されてきた経緯がある。そして、近年では、ネットで多様 なコンテンツが公開できるようになったことで、その二次使用に関する手続きが円滑に行えるプラットフォームが求 められている。
さらに、人工知能(AI)の進化も、著作権ビジネスの領域を広げようとしている。
AIは膨大なデータを学習させることで加速度的に賢くなるが、データの素材として活用できるものには、各種の統
計資料、ネット上のコンテンツ、IoTセンサー、カメラなどが録画する映像など限り無い。
そのため、様々な場所から優良なデータを発掘しようとする「データマイニング」が行われるようになってきた。 このように収集された情報は、AIの頭脳を育てるための「データセット」として価値を持ち始めているが、それを 配布、販売することの権利体系は、法的にも未整備のままである。(こ の内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることが できます → 記事一覧 / JNEWS について)
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