スポーツの視聴形態でも、テレビからネットへの移行が起きており、スポーツ放映権の入札にもネット企業が多数参入して落札価格が高騰している。それに伴い、スポーツビジネスの仕組みや構造にも大きな変化が生じてきている。
ネット放映権を柱に再構築されるスポーツビジネス

JNEWS会員配信日 2016/8/18

 オリンピックの開催期間中は、テレビ観戦で寝不足になる人が増えるのは毎度のことだが、今年のリオ五輪からは、ネットやスマートフォンからの観戦がしやすくなったのが特徴である。

民放テレビ局が共同で立ち上げている「gorin.jp」や、NHKのオリンピック公式サイトでは、各種目のハイライトや生中継のストリーミング配信を行っていた。
さらに無料のスマホアプリも提供されているため、夜更かしをしなくても、朝の通勤電車で昨夜のダイジェストを視聴することもできるようになった。



こうした背景にあるのは、オリンピックの視聴率にも“テレビ離れ”の傾向みられることだ。夏季オリンピックの平均視聴率(夜の時間帯)は、1996年のアトランタ大会では17.3%だったのが、前回のロンドン大会では12.9%にまで下落している。その一方で、オリンピックの放映権料は高騰していることから、テレビ中継だけでは、黒字化が見込めないところにまで追い込まれているのだ。

《夏季オリンピックの平均視聴率推移(夜の時間帯)》

・2012年ロンドン大会(英国)…………………12.9%
・2008年北京大会(中国)………………………15.2%
・2004年アテネ大会(ギリシャ)………………15.3%
・2000年シドニー大会(オーストラリア)……14.3%
・1996年アトランタ大会(米国)………………17.3%
・1992年バルセロナ大会(スペイン)…………15.4%
・1988年ソウル(韓国)…………………………19.1%
・1984年ロサンゼルス大会(米国)……………20.4%
──────────────────────────
※出所:ビデオリサーチ

オリンピックに限らず、スポーツの放映権料は加速度的に高騰している。これは、視聴の形態が、スマートフォンにまで広がったことで、テレビ局の他にも放映権獲得に手を挙げる企業が増えていることが関係している。

Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)は、英国のネット配信会社、パフォームグループに対して、2017年から10年間の放映権を総額2,100億円(年間210億円×10年)で提供することを発表した。これまでのJリーグ放映権料は年間30億円と言われているから、放映権の価値が7倍に跳ね上がったことになる。これにより、Jリーグチームの経営状況も改善されることが期待されている。

《Jリーグ各チーム(J1)の平均収益構造:2014年》

(営業収入)
・広告収入…………………15.7億円
・入場料…………………… 6.8億円
・Jリーグ分配金………… 2.2億円(主にJリーグ放映権料からの分配)
・アカデミー運営収入…… 1.8億円
・その他収入……………… 6.3億円
─────────────────
○収益合計…………………32.9億円

(営業費用)
・チーム人件費……………15.0億円
・試合関連経費……………16.0億円
・トップチーム運営費…… 3.3億円
・アカデミー運営経費…… 1.2億円
・女子チーム運営費……… 0.1億円
・販売費、一般管理費……10.9億円
─────────────────
○経費合計…………………33.1億円

※出所:日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

ネットで「スポーツ」は、大量のアクセスを集められるキラーコンテンツになり得ることから、メジャーなプロスポーツだけでなく、マイナーなスポーツの放映権も注目されるようになり、そこに投資家も参入してきている。テレビとネットの違いは、チャンネル数が制限されることなく、幅広いスポーツの試合を配信することができ、各種目のニッチなファン層を世界から集められることだ。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です記事一覧JNEWSについて

JNEWS会員レポートの主な項目
 ●スポーツ放映権の価値と有料視聴体系
 ●世界の人気スポーツをタダで見る裏技
 ●ブックメーカーとスポーツ動画配信の関係
 ●注目されるマイナースポーツの価値
 ●アスリートの新たな資金調達モデル
 ●株式上場する欧州サッカーチームの実情
 ●欧州サッカーの移籍金投資スキーム
 ●ゲームを花形職業に昇華させるeスポーツ業界のビジネスモデル
 ●スポーツ業界から学ぶビッグデータ分析ビジネス
 ●商業主義オリンピックの運営資金を賄うテレビ放映権ビジネス
 ●著名投資家が注目するマイナーリーグの事業モデルと資産価値
 ●選手人件費の高騰から離脱するスモール・スポーツビジネス

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