広告ブロック時代に求められるネットビジネスモデルの転換
JNEWS会員配信日 2016/7/23
ネット上にあるコンテンツやサービスの大半は無料で公開されているが、それらが広告を収入源にしていることは、20年前から変わっていない。ユーザーが広告を見てクリックをする確率は、1%あれば合格水準と言われているが、裏を返せば、99%以上のユーザーはネット広告に煩わしさを感じているのも事実だ。
一方、Webサイト、ブログ、YouTubeのチャンネルなどを運営しているオーナーは、少しでも収入が欲しいという理由から、派手な広告をベタベタと貼り付けてしまう傾向がある。グーグルのアドセンス・プログラムに登録をすれば、テキスト、バナー、動画、モバイルなど、様々なタイプの広告を簡単に掲載することはできる。
アドセンス広告の報酬単価は、1クリックあたり30円前後が相場だが、数百円から千円を超すキーワードを見つけて、それをコンテンツのテーマしたサイトを立ち上げる起業者もいる。アドセンスの管理画面では、広告の表示回数やクリック数を細かく分析でき、広告収入を伸ばすためのアドバイス機能(最適化ツール)も用意されているため、1%未満のクリック率を2~3%にまで伸ばすことも可能だ。しかし、広告ばかりが目立つようになり、コンテンツ全体の見栄えは悪くなる。
グーグルの収益構造をみると、2015年の総売上 745億ドルの中で、広告収入が占める割合は90%を超している。グーグル自身も、会社全体の業績が広告に依存していることは気にしており、広告収入の割合を50%以下にするビジネスモデルの変革を目指しているが、その実現には至っていない。
《グーグル総売上に対する広告依存率》
総売上 | 広告収入(依存率) | |||
2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 |
293億ドル 379億ドル 501億ドル 555億ドル 656億ドル 745億ドル |
282億ドル(96.2%) 365億ドル(96.3%) 436億ドル(87.0%) 510億ドル(91.8%) 596億ドル(90.8%) 673億ドル(90.3%) |
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※出所:statista.com http://goo.gl/GjBAAC |
そして、近年の懸念事項として浮上しているのが、コンテンツ上の広告を自動的に削除できる「広告ブロックアプリ」が普及し始めたことである。
日本での普及率は、それ程高くはないが、海外ではネットユーザーの4人に1人が、何らかの広告ブロックアプリを利用するようになってきている。それらのアプリを、PCやスマートフォンにインストールすると、グーグルのアドセンスやYouTubeを含めたネット広告、アフィリエイト・バナーの大半が排除されて、ユーザーは、広告が表示されていないスッキリとした画面上でコンテンツのみを閲覧できるようになる。
広告が非掲載になると、端末やブラウザーの負荷も軽くなり、モバイルからの閲覧ではパケット通信料の節約にもなるため、ユーザーにとって広告ブロックアプリはデメリットが少なくて便利なツールだ。しかし、無料でコンテンツを公開しているサイト運営者にとっては、広告収入が減少するため死活問題になる。
《国別、年齢別にみた広告ブロックアプリの利用率(2016年)》
18~24歳 | 25~34歳 | 35~44歳 | 45~54歳 | 55歳以上 | 全体 | |||
ポーランド スペイン ドイツ 英国 米国 日本 |
60% 53% 48% 46% 44% 13% |
53% 40% 33% 20% 29% 11% |
37% 29% 28% 17% 24% 12% |
34% 20% 24% 18% 20% 10% |
25% 19% 16% 18% 17% 7% |
38% 36% 25% 21% 24% 10% |
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※出所:Reuters Institute Digital News Report 2016 |
データからわかるように、特に10代、20代の若いユーザーほど広告のブロック率が高いことから、広告収入をメインとしたポータルサイトでは、ビジネスモデルの転換を含めた、具体的な対策が急務の課題になっている。その解決策がどんな方法なのか、また、広告ブロックアプリの開発を手掛ける業者のビジネスについても、今回のレポートで解説していきたい。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です→記事一覧)
■JNEWS会員レポートの主な項目
●広告ブロックアプリの仕組みと開発体制
●アドブロックプラスのビジネスモデル解説
●進化する広告技術とパーソナルデータの価値
●無料の対価として引き渡すパーソナルデータ
●広告モデルから有料サブスクリプションへのシフト
●広告ブロックユーザーの特性と囲い込み
●PCより難しいモバイルマーケティングへの着眼点
●眠れるデータを発掘して収益化するビジネスモデル
●スポーツ業界から学ぶビッグデータ分析ビジネス
●スマホ消費者を店内に呼び込むロケーションマーケティング
●フリーミアム・ビジネスモデルのその後、失敗事例からの教訓
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2016.7.23
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