JNEWS会員配信日 2016/5/24
景気の良し悪しとは別にして、近頃は非正社員の時給上昇が顕著になっている。
リクルートジョブズが定期的に行っている平均時給調査によれば、フード系アルバイトの平均時給(首都圏)は、2010年に 904円/時だったのが、2016年には1,001円/時にまで上昇している。
《フード系アルバイトの平均時給(首都圏)》
・2010年3月………904円/時
・2011年3月………897円/時
・2012年3月………907円/時
・2013年3月………914円/時
・2014年3月………925円/時
・2015年3月………984円/時
・2016年3月……1,001円/時
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※出所:リクルートジョブズ
時給単価の上昇は、すべての業界にみられる傾向だが、飲食業界では、労働力の8割以上をパート・アルバイト人材で調達していることから、時給相場が1割高くなることは死活問題にもなりかねない。
1990年頃から2000年代にかけては、安価な労働力としてアルバイト・パートを都合良く活用した会社が業績を伸ばしてきたが、これからは少子高齢化により、労働者が不足していく。人手不足が反映されやすいのは、正社員の給与よりも時給相場であり、非正社員率が高い業界ほど人件費の負担が重くなっていく。その筆頭に挙げられるのが、ファストフード業界だ。
《非正社員率が高い業種分野》
・1位:ハンバーガー店(94.9%)
・2位:持ち帰り飲食サービス業(89.8%)
・3位:フライドチキン店、サンドイッチ専門店(89.0%)
・4位:カラオケボックス業(88.1%)
・5位:CD、DVDレンタル業(87.8%)
・6位:映画館(87.7%)
・7位:コンビニエンスストア(84.1%)
・8位:喫茶店(83.2%)
・9位:焼肉店(82.3%)
・10位:お好み焼き、焼きそば、たこ焼き(82.0%)
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※出所:平成21年経済センサス-基礎調査
時給相場の上昇は、米国にもみられる傾向であり、一部の州で法定最低賃金を「時給15ドル」にまで引き上げる動きが加速している。カリフォルニア州とニューヨーク州では、2019〜2023年までに、最低賃金を時給15ドルに引き上げることを法律で決定した。
現在の最低時給は、カリフォルニア州が10ドル、ニューヨーク州が 9ドルだから、事業者にとっては大幅な人件費の高騰になる。米国では数年前から、最低賃金の引き上げに関する労働運動(時給15ドル運動)が活発になり、経営者との年収格差を是正していこうとする風潮にある。
※出展:Fast food worker strikes(Wikipedia)
日本でも、「すき家」や「ワタミ」のアルバイトが過剰労働させられていた問題から端を発して、ブラックバイトに対する社会的非難は高まり、アルバイト・パート人材を安い時給で酷使することはできなくなっていくだろう。
時給の上昇は、パート・アルバイトで働く人達にとって福音となるはずだが、企業も、現行のスタッフ体制で全員の賃上げをすることができないため、大手のチェーン店では、店舗運営のスタイルを変革して、ロボットによる業務のオートメーション化や、顧客自身が注文や代金の決済をするセルフサービス化を進めようとしている。
ただし、店の業態転換には、多額の設備投資とリスクを抱えることになるため、単にスタッフの数を減らせるだけでなく、これまでよりも客単価の向上が望めるような、新たなビジネスモデルが求められている。→記事一覧)
■JNEWS会員レポートの主な項目
●時給15ドル問題に端を発する店舗改革
●セルフサービス端末導入のビジネスモデル
●生鮮食品の価値を高めるセルフ計り売りシステム
●ビジネスモデル転換で迷走する飲食チェーン
●セルフうどん店舗の採算性について
●中小事業者が時給上昇を味方にする発想
●地域差が広がる時給相場からのヒント
●eフードビジネスによる中小飲食店の生き残りと再生
●ギグ・エコノミーで形成されるオンデマンドワークの功罪
●近未来の労働力不足を解消するオンデマンドワーカー
●パーソナルロボットの労働市場への影響度
●ミレニアル世代を取り込むリクルートビジネスモデル
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2016.5.24
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