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教育現場をデジタル化するEdTechサービスと
電子デバイス市場
JNEWS会員配信日 2016/2/24

 米国で40年以上にわたり、子どもから親しまれているテレビ番組に「セサミストリート」がある。日本でも10年前までは放映されていたため、英語の授業などでも見たことのある人は多いだろう。

セサミストリートは1969年から米国の公営放送PBSが放映してきたが、番組の制作は「セサミワークショップ」という非営利の番組制作会社が行い、PBSが放映権料を払う契約になっていた。ところが2015年の夏からは、ケーブルテレビ局HBOの有料チャンネルが放映権を取得して、セサミストリートの新作シリーズを手掛けることになった。

セサミワークショップは、これまでPBSからの放映料と、セサミキャラクターのグッズ、番組のDVD販売を主な収益源にしてきたが、YouTubeなどネット系動画サービスの普及により、DVDの売上が減少してしまったことから、潤沢な番組制作費を確保するために、有料チャンネルのHBOへ乗り換えたとみられている。

■Sesame Workshop(セサミ・ワークショップ)
  http://www.sesameworkshop.org/

さらに、セサミストリートのブランド力を活かした子供向けビジネスを多角的に展開していくことが、2016年2月に発表された。セサミワークショップは、民間投資会社との共同基金により、「セサミ・ベンチャーズ」というベンチャーキャピタル部門を立ち上げて、子供関連で有意義なビジネスを立ち上げているスタートアップ企業に出資をしていく計画だ。1社あたりの出資額は 100万ドル程度を予定しており、セサミストリートのキャラクター使用許可を与えたり、支援する会社を番組内で登場させる計画もあるという。

出資対象のスタートアップ企業はまだ選定されていないが、候補のカテゴリーは、教育、食品、健康、家族、幼児教育、社会性の発達など、多分野にわたるとしている。セサミストリートは、低所得世帯の子供にとって、無料で受けられる幼児教育番組としても機能しているため、そうした子供達を支援するスタートアップへの出資も考えられる。

■セサミワークショップが設立する投資ファンド
  http://www.collaborativefund.com/about/collaborative-fund/

先進国では、子供の数が減少しているものの、逆に子供1人当たりの教育費は増えている。これからは、教材のアナログ(紙)からデジタルへの移行が本格的に始まるため、そのトレンドを上手に捉えることができれば、金融業界で画期的な新サービスを開発する「FinTech」のようなムーブメントを、教育業界でも起こせる可能性がある。これは「EdTech(教育+テクノロジー)」というキーワードで注目されている。

米国の調査会社、MarketsandMarkets社(マーケッツアンドマーケッツ)では、世界のEdTech市場は、2015年には437億ドル(5.2兆円)の規模があり、今後も年率16.7%のペースで成長して、2020年には 937億ドル(11.2兆円)に拡大すると予測している。

■Education Technology (Ed Tech) and Smart Classrooms Market
  http://bit.ly/1fySSPO

これは、学校の教室をデジタル化するハードウエアを対象に算定された数字で、それに付随するソフトウエアや教材コンテンツも含めれば、さらに大きな市場になる。その覇権争いをアップル、グーグル、マイクロソフトなどが展開している。

学校に導入される教育用デバイスとしては、これまでは「iPad」が高いシェアを獲得していたが、昨年頃からは、グーグルの「Chromebook(クロームブック)」が猛追をかけている。Windows 搭載パソコンとの比較でも、価格面でクロームブックが有利なことと、教育用アプリのプラットフォーム開発でもグーグルが一歩リードしている。

今後の教育ビジネスを手掛ける上では、この業界動向を理解しておくことが重要であり、EdTechによって学校の教育現場が変わっていく枠組みや、新たな教材や玩具の開発を手掛ける新興企業の動きを掘り下げていくことにしよう。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です→記事一覧

JNEWS会員レポートの主な項目
 ●iPadからChromebookに乗り換える米国の教育現場
 ●グーグルが描く教育プラットフォームの輪郭
 ●統計からみた教育アプリへの需要と購買特性
 ●教育アプリ販売のライセンス体系と収益モデル
 ●アプリと連動したスマート玩具の新市場
 ●学習の習慣を身に付けさせるスマート玩具
 ●ネットと玩具を繋ぐIoToysプラットフォーム
 ●50年サイクルの変革期が訪れる教育ビジネス
 ●世界に広がるSTEM教育による理系人材育成とスクール事業
 ●多分野に広がるIoTデバイス開発の発想アイデアと潜在市場
 ●キッザニアの成功戦略にみるエデュテイメント事業の仕掛け方
 ●個性と才能を伸ばす教育分野の新職種と新たなスクール形態

この記事の完全レポート
 ・JNEWS LETTER 2016.2.24
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