JNEWS会員配信日 2015/9/28
将棋の世界では、コンピュータがプロの棋士に勝つための研究は1970年代から行われてきた。将棋は指し手の選択肢が非常に多いため、すべての手を一つずつ試していくプログラミングでは、人間の思考力に追いつくことはできず、過去の棋譜データを学習しながら、人間の棋士と同じように指し手を考えられる人工知能(AI)のアルゴリズムが各所で研究されている。
1990年代までは、「コンピュータがプロ棋士に勝つことは当面無いだろう」と言われていたが、現在は中級クラスのプロ棋士に勝つところまで人工知能は進化してきている。トップクラスのタイトル保持者を打ち負かす日も近いと言われているが、それが現実になると“プロ棋士”という職業の権威が失墜してしまう懸念もあって、人工知能とトップ棋士との公式戦は実現させにくいようだ。
チェスや将棋などの頭脳ゲームは、人工知能との相性が良いことから研究材料にされてきた経緯があるが、同じようなことは他の職業にも当てはまるようになる。
従来のプログラムは、コンピュータに命令通りの計算処理を実行させるものだったが、人工知能は蓄積されたデータから機械的な学習をしてコンピュータの判断能力を進化させていくことができる。単純作業だけではなく、これまで高度な人材が担当してきた仕事までを代行できるようになる。
また、東京五輪のエンブレム問題にみられたような、完全なコピーでなくとも、他人の著作権侵害にあたるデザインの模倣があるか否かを、世界の著作物を対象にして調査するような作業は、人間が完璧に行うことは不可能だが、人工知能ならば可能になる。
《人工知能が代行できる職種例》
○薬剤師の調剤業務
○医療画像の診断
○会計処理や申告書のチェック
○弁護士の判例調査
○銀行の融資審査
○保険の加入審査
○投資ファンドマネージャー
○防犯カメラの監視
○映像の編集作業
○教師の個別指導、答案の採点
○工場の製品検査
○コールセンター業務
○新聞社や出版社の記事執筆
○上司や顧客に提出する報告書の作成
○著作権侵害の調査
○レストランや小売店の接客サービス
人工知能にできることは飛躍的に進化している途中だが、普及段階に入れば、コンピューターと人間の関わり方も大きく変わるとみられている。
たとえば、IBMが開発した「ワトソン」という人工知能は、自然な言葉で質問された文脈や意味を理解することができる。次にデータベースの中から関連のある情報を見つけて、複数の候補がどの程度正しいのかを検証した上で解答を導き出す。さらに検索回数を重ねることで人工知能が学習をして、質問者が求める解答の精度を高めていくことができる。
IBMでは、人工知能による自然言語の処理、仮説生成/評価、機械学習を組み合わせたソリューションを「コグニティブ・コンピューティング」と呼び、様々な専門分野へ導入していこうとしている。
人工知能は多様な職業別にも開発されてきており、しかも安価なクラウドサービスとして提供されたり、オープンソースとして無償で利用できるものも出てきている。そうした中で、これからの労働市場に人工知能がどのような影響を与えていくのか、また人工知能を活用したビジネスとしては、どんな方向性が考えられるのかを見ていきたい。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です)
■JNEWS会員レポートの主な項目
●弁護士の仕事をサポートする人工知能
●医療ミスを軽減するための人工知能ロボット
●人工知能で自動作成される記事コンテンツ
●ポータルサイトの記事自動作成による増収モデル
●顧客の深層心理を読み取る人工知能
●重要シーンを自動編集してくれるAIカメラ
●人工知能開発のビジネスモデルについて
●眠れるデータを発掘して収益化するビジネスモデルと着眼点
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2015.9.28
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