JNEWS会員配信日 2015/3/31
野菜や魚などの生鮮品、米やミネラルウォーターなど重くて嵩張る商品でも、オンラインで注文すれば、当日または翌日までに配達してもらえる「ネットスーパー事業」には、数年前から大手スーパーチェーンが競うように参戦した。
しかし、運営側では「収益性が低い」という特性を掴み始めており、早々に撤退を決めるケースも出てきた。住友商事が子会社として運営していた「サミットネットスーパー(2009年開業)」は、東京都と神奈川県で25万人の宅配会員を獲得していたものの、2014年10月にサービスを終了している。
不採算の要因は、商品の配送にかかる固定的な経費の高さだ。サミットでは宅配専用の配送センターを設置していたが、センターを維持していくための経費は日々かかるため、宅配会員数が多いだけではなく、その会員がコンスタントに注文を続けてくれないと、赤字の垂れ流しになってしまう。
また、専用の配送センターを持たずに、スーパーの店頭に陳列されている商品をピッキングをして配達するタイプのネットスーパーからも、問題が露呈してきている。野菜、魚、肉などの生鮮品は、できるだけ新鮮で、お買い得な商品を選ぶ目利きが重要になるが、スーパー直営の宅配サービスは、そこまで消費者寄りに配慮されていない。
そのため、ネットスーパーの会員登録はしたものの、使い勝手が今ひとつで、実際の利用頻度はそれほど高くないという消費者が少なくないのだ。
しかし、消費者のライフスタイルが多様化してきたことで、ネットスーパー事業への潜在的な需要が高まってきているのも確かだ。海外では、フードビジネスの中で、生鮮品を含めた食料品のデリバリーサービスが急成長してきている。
米国でも、ネットスーパーのビジネスモデルは1990年代から失敗を重ねており、多数の新興企業が消えていった。その試行錯誤を経て、2013年頃から浮上してきたのが、フリーの人材(パーソナルショッパー)がスマホアプリからの指示で買い物代行をするサービスである。
この動きについては 2014.1.8号で解説したが、その中で紹介した「Instacart(インスタカート)」は、急成長が見込めるパーソナルショッピングサービスとして期待され、投資家・ベンチャーキャピタルから 2億2,000万ドル(約260億円)の出資を受けて、企業価値は20億ドルと評価されている。
■Instacart https://www.instacart.com/
現在はホールフーズ、トレーダー・ジョーズ、コストコ、クローガー、セーフウェイなどの大手スーパーチェーンと提携し、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴなど、米国内の15都市でデリバリーサービスが展開されている。2014年度の総収入は1億ドルを超して、前年比で約10倍の成長を遂げている。
スーパー側にしてみると、インスタカートと提携することにより、自前のリソースを使わずにデリバリーサービスを実現できるようになる。また、配達員は、店に雇われているのとは違うため、依頼者のために、同じ陳列棚にある商品でも、できるだけ鮮度の高い商品を探そうとすることが、サービスの向上に繋がっている。
そうした新デリバリーサービスの仕組みを理解することは、日本でも求められているネットスーパー事業を再構築する上でのヒントになるものだ。
■正式版レポートの柱となる項目
●インスタカートが提示する新ショッピングスタイル
●パーソナルショッパーの就労スタイル
●インスタカートを活用した応用ビジネスモデル
●中小店舗の配達を請け負うポストメイト
●出前サービスからフードロジスティックスへの進化
●日本でパーソナルショッパーは成り立つか?
●スマホアプリを起点にしたデリバリー2.0型の宅配ビジネス
●販客を呼び戻すリアル店舗向け買い物代行サービスの台頭
●買い物弱者をカバーするネットスーパー事業の仕組みと採算構造
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2015.3.31
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