JNEWS会員配信日 2015/2/3
日本では、すべての国民が高度な医療を安価で受けられるが、これは世界でも珍しい。公的保険による割引を差し引いても、日本の医療は、「技術の高さと料金」のバランスで世界最高の水準といえる。盲腸の手術をして入院をした際にかかる医療費の国際比較をみても、それがよくわかる。
そのため、海外からも「日本の病院で受診したい」というニーズは潜在的に多い。
円安の影響もあり、中国、アジアからの訪日旅行者は数年前から急増しているが、観光やビジネスに加えて、医療を目的とした旅行者も今後は増えていくことが予測されている。
日本政府や各自治体もそこに着目して、海外から医療目的の旅行者を誘致する「メディカルツーリズム」を有望市場と捉えている。
海外の富裕層を主なターゲットとしたメディカルツーリズムは、日本が掲げる成長戦略の一つであり、2010年には外務省が「医療滞在ビザ」を創設した。このビザは、一定の経済力がある人を対象に、日本国内の病院で、人間ドッグ、健康診断、病気の治療、手術、歯科治療などを受けるための滞在を、家族同伴で最大6ヶ月まで認めるものだ。
いま世界では、国境を越えた医療目的の旅行者が年間で 800万〜1000万人いるとみられているが、新興国の経済成長に伴い、その数は更に増えていく見通しだ。
しかし、日本はメディカルツーリズムの国際市場において、かなりの遅れをとっている。
シンガポールやタイでは、先進国の患者を誘致するために、空港からアクセスの良い場所に高級病院を建設して、腰のヘルニア、人工関節への置き換え、心臓のバイパス手術など、高度な治療を主に行っている。米国と比べれば、半額以下で同等の手術ができるのがウリである。
ただし、新興国のメディカルツーリズムに弱点があることも露呈してきており、医療先進国である日本が挽回できる余地は多いにある。
これからの病院経営は、国内だけではなく、海外からも裕福な患者を集めることで収益状況を良くして、優秀な医師や看護師を雇ったり、最新の設備を導入することが求められる。それが、一般患者に対する医療サービスの質を高めることにも繋がるのだ。
しかし、メディカルツーリズムは、各病院が単独で行うのではなく、旅行会社やコーディネート会社、通訳者などとの連携によって成り立つものである。その仕組みがどうなっているのかを、世界で最も患者の輸出入が活発な米国の動向を紹介しながら、日本での参入ポイントを考えていきたい。
■この記事の主な項目
●医療費を削減するメディカルツーリングの長短
●国内版メディカルツーリズムへの回帰
●日本版メディカルツーリズムと高度先進医療
●求められる訪日外国人への医療対応サービス
●医療通訳者への需要と受発注ルート
●遠隔通訳サービスの必要性について
●8割が赤字に陥る健康保険組合の運営立て直しモデル
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2015.2.3
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