JNEWS会員配信日 2014/10/14
大手の飲食チェーンは同業者間のM&Aが活発化している。その目的は、系列の店舗数を増やすことで、食材の仕入れコストを下げることにある。飲食業界では料理に使う原材料の中で、輸入食材の割合が5割を超してきていることから、為替が円安に振れることのダメージも大きい。
一方、一般家庭の中では、輸入食材を敬遠する動きが高まっている。他国から輸入される野菜や果物は、流通の過程で倉庫に長時間保管された後、植物検疫のための防虫・殺菌処理が行われているため、安全面での不安があるためだ。
《輸入野菜の割合(2013年)》
・生鮮野菜……………23.4%
・冷凍野菜……………35.9%
・塩蔵等野菜………… 2.6%
・トマト加工品……… 7.0%
・その他調整野菜……21.6%
《輸入野菜(生鮮)の国別シェア(2013年)》
・中国……………………60%
・米国……………………13%
・メキシコ……………… 9%
・ニュージーランド…… 8%
・韓国…………………… 4%
・台湾…………………… 2%
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※出所:農畜産業振興機構
しかし、日本国内で収穫される野菜の中でも、完全な無農薬で栽培される有機野菜の割合は1%未満しかなく、身近なスーパーなどでは安定的に購入することが難しい。
そのため、安全な野菜を、定期購買方式で宅配するサービスが会員数を伸ばしている。月額3〜6千円前後の定額料金で、旬の野菜が詰め合わされたボックスが毎週届くシステムだ。生鮮品の宅配事業は「会員数×月額会費」によって、会員数が一定の損益分岐点を超えると、収益が安定しやすく、一般家庭をターゲットに、スマートフォンからの集客も手掛けやすくなってきている。
そこで、NTTドコモは、2012年に「らでぃっしゅぼーや(会員数:約10万世帯)」を子会社化。2013年にローソンが「大地を守る会(会員数:約8万世帯)」の株式を一部取得して業務提携。2014年には、京阪電鉄が「ビオ・マーケット(会員数:約8千世帯)」を子会社化、というように、大手企業が宅配業者を傘下に収め始める動が加速している。
安全で信頼できる生鮮品への関心は、所得水準の高い世帯ほど高いと言われていることから、会員制宅配サービスのビジネス価値は上昇している。ただし、無農薬の食材は収穫量が限られていることから、本来はスモールビジネスのほうが適しており、鮮度の面からも、宅配エリアはローカルなほうが、逆に強みにすることができる。
安全な食材を求める消費者が増えているのは、欧米でも共通した傾向だが、ローカルな商圏の中で、農産物の流通システムを再構築している点が、日本の宅配サービスとは異なっている。
全国規模の宅配ネットワークでは、農作物の鮮度を保ちながら、各家庭への個別配送をすることが難しいし、それ以外でもローカルフードにこだわることで、多くの利点があることがわかってきている。
■この記事の主な項目
●フードマイルを意識したローカルフード運動
●ローカルフードの拠点となるファーマーズマーケット
●農家の直販システムとフードハブ機能について
●漁獲量減少が深刻な国内漁業の状況
●消費者が漁師をサポートする新たな漁業システム
●地域店舗を潰さないバイローカルキャンペーンの発想と経済学
●オンライン販売とフリマ出店を併用したスモール起業のスタイル
●フードトラックからスタートするナチュラルフードビジネス
●世界の食料不足に備えたアーバンファーム(都市農業)への着目
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2014.10.14
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