JNEWS会員配信日 2014/8/29
人間が豊かに暮らすには、お金の他にも、身近な人間関係、それに、これまでに身に付けてきた知識や経験など、複数の項目が必要になり、それぞれが、自分にとっての“資産”といえるものである。
仲間からの励ましや、支え合いがあれば、お金は無くても幸福な気持ちを抱くことはできるし、人生のトラブルが起きた時には、過去に築いてきた人脈や、学んだ知識が助けとなることは多い。そのため、人との繋がりを広げていくことや、学びの機会を増やすことに関心を抱く人達は増えている。
これは「どれだけお金を持っているのか」で優劣が決まる、資本主義の発想とは異なるもので、シェアリングエコノミー(共有経済)の根幹となる価値観といえるものだ。
共有の精神には、多様な考え方があり、私利私欲を完全に排除して他人のために尽くしたいという人ばかりではなく、自分が保有するモノや知識を「独占」から「共有」することへと切り替えて、やがては、自分への見返りや対価として戻ってくることを期待する人もいる。それも間違いではないだろう。インターネットによって、広範囲での人間関係が築きやすくなれば、個人と個人との間で、様々な交換取引が可能になってくる。
調査会社のニールセンが2013年に、60の国と地域の消費者を対象に行った「シェアコミュニティに関するグローバル調査」では、オンラインアンケートの回答者(約3万人)の3分の2以上(68%)が、金銭を得るために個人資産(モノや知識)を共有/レンタルしても良いと考えている。また、66%の人が、他人がレンタルするモノやサービスを利用することに前向きだ。
シェアリングの価値観が最も定着しているのは、子どもの頃からインターネットを使い慣れている、ミレニアル世代と呼ばれる若者層(21〜34歳)だが、それよりも年長者にあたる、X世代(35歳〜49歳)、ベビーブーマー世代(50歳〜64歳)でもシェアリングコミュニティへの参加意欲が高まっており、消費者間での賃貸を指すコンシューマー・レンタルの市場規模は 260億ドル(約2兆6千億円)と推定されている。
シェアリング仲介サービスのインフラ開発は、オールド企業が手掛けてこなかった分野だけに、新興企業の活躍が期待されており、2013年以降、米国のベンチャーキャピタルが多額の投資をしている事業案件は、ほとんどがシェアリング関連といって過言ではない。
しかし、シェアリングのビジネスモデルにも進化の過程があり、人気サービスの中でも新旧の交代が起こっていたり、利用してみて判明した問題点も指摘されている。乱立するシェアリングコミュニティの中で生き残るには、仲介手数料の安さを追求するだけではなく、取引の安全性や、会員ユーザーの質に気を配る必要がある。一方、利用者側は、シェアリング・エリートとしての評価を高めていくことで、“お金”とは別の価値観で、豊かな生活をしていくことができるようになる。それが、どんな仕組みによるものなのかを解説していきたい。
■この記事の主な項目
●シェアリングユーザーの成長過程とは
●欧米シェアリング人口の割合と市場規模
●シェアリング経済で形成される信用社会の仕組み
●入会条件で決まるシェアコミュニティの価値
●自家製食品をシェアするフードスワップ
●多様なスキルを交換するためタイムバンキング
●タイムマネーによる労力の取引交換
●脱マイカー世代を取り込むタクシー業界向け集客支援ビジネス
●シェアリングエコノミーのエリート層と新たな信用社会
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2014.8.29
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