地域の中小店舗を積極的に利用することで、地域の経済を活性化させる「バイローカルキャンペーン」という取り組みが、米国の各所で起きている。各家庭が毎月の消費支出に対して10%を、ローカル店舗での買い物にシフトすることで、地域の雇用や景気を引き上げることができると試算されている。 (JNEWSについてトップページ
地域店舗を潰さないバイローカルキャンペーンの発想と経済学

JNEWS
JNEWS会員配信日 2014/5/23

 長らく地域で親しまれてきた店が「今月で閉店になる」というニュースが流れると、「それは残念だ」「もう少しがんばってほしかった」という声が必ず聞かれるが、それなら何故、その店に通い続けなかったのかという矛盾した気持ちを抱くものだ。

近頃では、大型のショッピングセンターや量販店、ネット通販など、安くて便利な買い物の選択肢が増えて、地域の中小店舗からは、無意識のうちに消費者の足が遠のいてしまっている。しかし、地域の店が無くなることで様々な弊害が生じてくる。

具体的には、徒歩圏の買い物ができなくなることによる「買い物難民」の増加、閉店による失業者の増加、税収の減少、人口の減少(過疎化)、地価の下落など、地域の経済が連鎖して悪くなっていく。

このように、一つの産業に関連した経済の影響度は「付加価値額」という数値によって算定することができるが、小売業の付加価値額は、製造業に次いで大きなものになっている。

《産業別にみた全国企業の付加価値額》

《付加価値額の算定方法》 ●事業の付加価値額=[営業利益]+[人件費]+[減価償却費]

全国にある小売業社は、98%が従業員50人未満の中小企業で、経営は厳しい状況にあるが、店が閉店することは、地域の付加価値が減少することを意味して、市民全体の損失になる。そのため、地方の自治体や消費者が何らかの形で地域の業者を支えていくことも大切だ。これは日本に限らず、他の先進国でも共通した課題となっている。

そこで、米国ではローカルビジネスの支援策として「バイローカル・キャンペーン(Buy Local Campaign)」と呼ばれる活動が普及してきている。地域の消費者は、売上が本社へ吸い取られていく、大手チェーンの店舗よりも、地域で独立経営をする店舗を利用することで、買い物に使った資金を地域内に環流させることができ、当地の経済を活況にしようとする取り組みだ。

消費者が、地域の商店で買い物して、店が潰れるのを防ぐことは、経営者を助けるだけではなく、失業者を減らすことや、自治体の税金が増えることによって、市民の生活向上に繋がることが、経済学からも裏付けられるようになってきた。

バイローカル・キャンペーンの具体的な方法は、色々なアイデアが考案されていて、消費者の立場からの活動(非営利)と、ビジネスとして取り組める両面がある。それは、日本も叫ばれている“地産地費”にも応用することができ、ローカルビジネスの売上を伸ばしていくことができる。その詳細を解説していこう。

【米国で結成されるバイローカル団体とは】

 地方の中小業者が、大手の量販店やチェーン店とは一線を画して、独自の特徴や魅力を打ち出していくことは、資金やノウハウの面でなかなか難しい。そこで、複数の事業者がグループを組むことで、ユニークな販促アイデアを企画したり、共同でキャンペーンを実行することにより、消費者に、地元業者から商品を購入する利点を提示することが、バイローカル・キャンペーンの目的となっている。

米国の各州では、事業者と市民が連携したバイローカル団体が結成されて、各種の企画を実行している。活動の根拠としているのは、地域の消費者が、全国チェーン店から買い物をするのと、大手資本には属さない、地元で独立経営をする店舗から買うのとでは、自治体への税金、従業員の人件費、商品や原材料の仕入れなどで、地元に環流する資金が以下のように違うことである。

《売上の中で地域に環流する資金の割合》

バイローカル団体が行うのは、地域の事業者を組織化して、具体的な販促マーケティングの方法を教えることや、会員業者が協力して販促キャンペーンを実施することである。全国チェーンの大企業では、それらを自社で行える体制が揃っているが、地域の中小業者は単独でマーケティングのアイデアを考え、それを実行することは難しいため、こうした団体に参加することで、ローカルビジネスの新境地を切り拓こうとしている。

バイローカル団体は、非営利(NPO)の形態で運営されるケースが多いが、活動を維持していくための収益構造は、それぞれ異なっている。ユタ州の「LocalFirst Utah(ローカルファースト・ユタ」では、地域の自治体、銀行、地元の優良企業、新聞や雑誌社などをスポンサーとすることで、中小業者は無料で会員になることができる。ただし、地元の経営者や株主などで、50%超の所有権を持つ事業者であることが、入会の条件で、現在の会員数は約4,000社。

Local First Utah(ユタ州のバイローカル団体)

一方、アリゾナ州の「Local First Arizona」は、事業者の従業員数に応じた会費制(年間35~349ドル)としており、約2,500社の地域業者が加入しているが、会員特典として、ローカル販促キャンペーンへの参加、地域メディア(テレビ、ラジオ、雑誌、ローカルサイト)などへ割引価格での広告掲載、事務用品購入の割引、会員同士が交流するコミュニティへ参加できることなどがある。

Local First Arizona(アリゾナ州のバイローカル団体)

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JNEWS会員レポートの主な項目
・米国で結成されるバイローカル団体とは
・地域経済を支えるローカリスト消費者
・バイローカル団体による集客支援の流れ
・シフト・ユア・ショッピングの経済効果について
・第4セクター型ローカルビジネスの特徴
・スモールビジネス・サタデーの仕掛け人
・ローカル店舗が考案する集客アイデア
・アマゾンに負けないローカル書店の生き残り策
・フリーマーケットを起点とした小売ビジネスの新形態

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