JNEWS会員配信日 2014/2/26
理系の国家資格で最難関といえば「医師」が筆頭に挙げられる。毎年およそ8千人が新たに医師免許を取得しているが、大学医学部の正規課程(6年間)を修了した者でなければ受験資格は与えられない。
医学部への入学には、高い学力が求められる他に、高額の学費を払えるだけの経済力も必要になってくる。私立の医学部は、6年間の学費が平均3千万円台で、学費以外の経費や、医大合格までの教育費なども含めると、「子どもを医者にしたい」と考える家庭では、トータルで5千万円以上の資金を工面しなくてはいけない。
医師免許を取得した後には、高年収が約束されると思われているが、病院に勤める勤務医の平均年収は、約1100万円(平均年齢41歳)となっており、他業界の上級職と比べても、それほど高いわけではない。反面、医師の仕事は激務である。
医師が高年収を狙うためには、自分のクリニックを開業する選択肢があるが、建物と医療設備を含めて、少なくても1億円前後の開業資金が必要になる。しかし、収入の源流となる、診療報酬の単価は年々切り下げられており、看護師などスタッフの人件費もかかることから、個人開業医の経営状況も意外と厳しくて、医療収入から経費を差し引いた収支差額は、勤務医の1.7倍(月収200万円前後)に留まっている。さらに、この収入からは開業時の借入金も返済されているため、実質的な開業医の所得は、これよりも低くなる。
これから、国民の高齢化が進むにあたり、医師の数は不足していくことが予測されるが、診療報酬の引き下げにより年収もダウンしていけば、“医師”という職業への魅力も減退して、それが医療レベルの低下に繋がってしまう。
収入の減少を補うため、公立の病院を除けば、医師の副業は柔軟に認められているケースが多く、常勤している病院以外でも、週に1〜2日は、他の病院で診療のアルバイトをしている。医師のアルバイト時給は5千〜1万円と高いが、常勤とアルバイトの掛け持ちは、体力的な負担が重くて、医療ミスを誘発することも懸念される。
そこで、病院の収益構造を改善したり、医師の負担が少ない勤務体系へと再構築することが、今後の医療改革では求められている。そして医師の中からも、従来のような独立開業ではなく、フリーランスとして仕事をするスタイルが登場しているのは、テレビドラマの話だけではない。
医師が求められるのは、病院などの医療現場に限らず、健康に関連したサービス全般へと広がっており、民間業者と医師とが提携したビジネスが海外では多くみられるようになってきた。日本でも、医師の高収入が公的保険のみによって支えられてきた時代は終わろうとしており、それ以外でも、収入の道を模索しなくてはいけない時期に差し掛かっている。
●個人開業医をネットワーク化するビジネス
●医師が起業する健康食品ビジネス
●病院が立ち上げる健康食の宅配サービス
●病院と提携したスポーツクラブ運営
●医師団体による健康用品の認証ビジネス
●信頼できる医師の評価情報と格付システム
●医師の副業を支えるメディカルライターの役割
●処方薬の流通経路にみる医療業界の商慣習と価格崩壊
●崩壊寸前にある日本の健康保険と世界で最も高い米医療制度
●アンチエイジングと薄毛治療からみた自由診療ビジネス
●医療現場から学ぶセカンドオピニオンによる助言業務の仕組み
● 玉石混淆の健康サービスが生き残るための医師との協業ビジネス
JNEWS LETTER 2014.2.26
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