JNEWS会員配信日 2014/2/1
マイカーを所有するのではなく、共有する仕組みの「カーシェアリング」が注目されはじめたのは、2000年頃からのこと。もともとカーシェアリングの発想は1970年代から欧米にあったものだが、21世紀にエコロジーの時代を迎えて、本格的にカーシェアリングの仕組みが注目されるようになった。
一時期は、カーシェアリングが「マイカー所有の価値観を根底から変える」という声もあったが、最近では、マイカー所有者とカーシェアリング利用者との間には、自然な棲み分けが生じることがわかってきた。
絶対数としては、マイカー派が圧倒的に多く、カーシェアリングはマイカーの不便な部分を埋める新サービスという位置付けで、この立場が逆転することは無いようだ。世界各国でも、カーシェアリングの意義は評価されながらも、実際の利用者は、人口比で1%未満に留まっている。
《世界のカーシェアリング(CS)利用者数》
ただし、自動車の活用方法が変化してきているのは事実で、無駄なコストを省きながら、便利で安全に移動する方法が求められている。都会では、交通渋滞や駐車場の問題でマイカーを所有しにくくなっているし、高齢者にとっては、自分が運転できなくなった後の、移動手段を確保することは切実な問題である。
最近では、近隣スーパーへの買い物でも、タクシーを利用する高齢者を見かけるようになってきたが、“日常の足”として使うにタクシー運賃は高すぎる。そこで、タクシーよりも安価で、マイカーの代わりとなるサービスを、新たに開発していく必要がある。そこで重要になるのは、「車両」よりも「ドライバー」の存在だ。
米国では「Uber(ウーバー)」という配車サービスの利用者が急増していることは2014.1.8号でも紹介したが、日本でも、類似のサービスモデルを複数の視点から考えることができる。日本のタクシー利用者は減少の一途を辿っており、1990年の輸送人員が延べ32億人だったのが、2012年の利用者は、その半分にまで落ち込んでいる。国内タクシーの不振は、不況の影響というより、世界で最も高い運賃と、使い勝手が悪いことが原因とみるべきだ。
《タクシーの車両数と年間利用者の推移》
《タクシーの経営指標》
《1,000円の運賃でタクシーが走行する距離の国際比較》
タクシーを中心とした個人向けの旅客運送業は、国からの規制を受けている業界で、運賃やサービス形態を自由にできないことが、利用者ニーズとのミスマッチを引き起こしている。しかし海外では、タクシーに変わる画期的な新サービスが各所で登場してきていることから、日本でも規制をすり抜ける形で、合法的な新サービスを生み出していくことはできないか。それを考えていくことにしよう。
●タクシー利用率を高める支援サービスの動向
●タクシーに代わる相乗りサービスの普及
●ライドシェアリングで稼ぐアマチュア・ドライバー
●米国「Uber」「Lyft」のビジネスモデル解説
●日本でのライドシェアリングの可能性
●高齢者向けお抱え運転手・運転代行サービス
●プロドライバーとしてのライセンスと価値
●高齢者の生活を支えるフレキシブルワーカーと配車サービス
●身の回りの買い物をアシストするパーソナルアシスタント
JNEWS LETTER 2014.2.1
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●安全コストを意識したカーシェアリング事業の採算と転換期
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