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  世界からみると「戸籍制度」がある国は少数だが、生活保護などの不正受給を防ぐ目的で国民ID制を導入しようとする国が増えている。その中では、目の奧にある虹彩による生体認証など、最新のセキュリティ技術が導入されている。
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国民ID導入の構想と
CIAが先導する米セキュリティ業界
written in 2012/5/28

 日本では先祖から子孫まで、家族単位で記録が管理された「戸籍」が古くからあるが、これは、世界からみれば異例のことである。日本の戸籍制度は、いまから1400年以上前の飛鳥時代に、当時の税金にあたる「租・庸・調」を、集落の各戸から徴収するための台帳として作成されたことが起源のようである。

時代によって戸籍の形式は変わっていったが、昭和の戦後からは新戸籍法が制定されて現在の形になり、住民基本台帳ともリンクしている。そのため役所では、日本人すべての戸籍から身元を把握できるが、じつは在日の外国人については、戸籍や住民票が存在していない。

しかし、日本も次第に多国籍の社会になり、それでは不都合なことも増えてきたことから、2012年7月には、住民基本台帳法が改正されて、外国人の住民票も作成されるようになる。それにより、外国人でも国民健康保険への加入や、公的サービスを受けやすくすることの他に、テロや国際犯罪を防ぐための用途もある。

いま世界では、戸籍制度が無い国でも、新たな身分証明の仕組みを導入しようとする動きが活発になっている。たとえば、インドでは、12億人の国民すべてのIDカードを作るプロジェクトが、2006年から進められている。IDカードの中には、氏名、性別、生年月日、住所、顔写真などの他に、指紋や眼球の虹彩(こうさい)をスキャンしたデータも記録される。

このプロジェクトが完成すれば、世界最大の国民IDデータベースが実現することになるが、インドが大がかりなIDカード事業に乗り出したのは、生活保護の不正受給を防ぐのが主な目的だ。インド国内では、一般人の不正に加えて、公務員の中にも、役所内のデータを操作して不正受給を図ったり、仲介者が搾取していることがあるため、それを防ぐのが最大の目的とされている。しかし、ID化による国民の利点も大きい。

インド政府の発表では、IDカードの普及に 3.6億ドルの費用がかかるが、それによって貧困者でも、適正な医療や教育サービスが受けられるようになったり、IDカードを公式な身分証明として、銀行口座の開設やATMカードの作成がしやすくなり、国民の経済レベルを底上げできると説明している。人口と国土が広いインドでは、すべての地域に銀行の支店を作ることは難しいが、ATMによる電子的な金融ネットワークであれば、短期で実現させることができる。

■インド政府のIDカード事業(UIDAI)
  http://uidai.gov.in/

《国民IDカードの活用範囲》

  

日本でも、国民IDカードの導入は以前から検討されている他、身元を証明するIDカードを配布する動きは、企業、学校、その他の団体や施設にも広がっている。個人の情報を管理することには反対の意見があるものの、セキュリティ対策としてIDカードは各所での導入が見込まれている。

最先端では、その人が誰であるのかを自動認識できる「IDサービス=個人認証(Identification Authority)」が開発されており、各種のバイオメトリクス(生体認証)技術が利用されている。生体認証は、即座に本人の特定ができるため、高度なIDサービスが実現できるようになる。

また米国では、2001年の同時多発テロをきっかけに、様々なセキュリティ機能が普及することになった。防犯カメラやセキュリティゲートが多くの場所や施設で導入されることとなり、関連の機器を開発することが一大ビジネスに成長した。今でも技術の進化は続いているが、その背後には米CIA((米中央情報局)の後押しがある。

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この記事の核となる項目
 ●米CIAの出資で進化するバイオメトリクス技術
 ●CIA出資による技術育成モデルの解説
 ●普及段階に入った生体認証システム
 ●社会保障詐欺を防ぐスマートカードの役割
 ●就職採用の身元調査と信用データベースの需要
 ●従業員の経歴詐称を見破る仕組み
 ●小売店で深刻化する店員窃盗の対策ビジネス
 ●健康状態の詐称に対する対応策の必要性
 ●従業員ヘルスレコードの潜在市場
 ●財政破綻に陥るスペイン失業者の意外な実像と生活レベル
 ●格差社会に求められる新たな信用制度と会員制ビジネス
 ●優良ベビーシッターの育成事業と放課後教育ビジネスの商機
 ●子供の安全を守る身分証明キットの仕組み


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JNEWS LETTER 2012.5.28
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