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将来の有望人材を支えるスポンサー事業と
社会貢献の融合
written in 2010/10/25

 米経済誌のフォーブスが発表している、スポーツアスリート高年収ランキングによれば、世界で最も稼いでいる女性スポーツ選手は、テニス界のマリア・シャラポワで、2450万ドル(約20億円)の年収がある。しかし、試合の獲得賞金として得ているのは、その中の1割以下で、残りの9割は企業とのスポンサー契約による収入である。

ランキングの5位には、フィギュアスケートのキム・ヨナ(韓国)が 970万ドル(約8億円)で入っているが、彼女にはヒュンダイ、サムスン電子などの韓国有力企業がスポンサーとして付いている。

このように、世界で活躍するスポーツ選手にとって、好不調の波に左右される賞金収入だけでは、専属のコーチやスタッフを抱えながら活動していくことは難しく、スポンサーの支えが必要だ。

一方、スポンサーとなる企業にとっては、その選手が持っている才能や個性、それに人を惹きつけるカリスマ性などを、自社の製品やブランドイメージと重ね合わせたPRをすることで、消費者からの支持を集めたり、売上に結びつくことを期待している。仮に、その選手が試合に負けたとしても、たくさんの人達に感動や希望を与えることができれば、スポンサーへの貢献度は高いと言えるだろう。

では、具体的に「スポンサー」とは何なのか?直接的には“広告主”と捉えられることもあるが、欧米ではスポーツ、芸術、教育、環境、社会貢献などの活動を、で後援・支援することが「スポンサーシップ」であり、従来の広告よりも高度な手法へと進化している。スポンサーシップのコンサルティングを手掛ける IEG社のレポートによると、米国の企業がスポンサーとして提供している資金の総額(2009年)は 169.7億ドル(1.4兆円)で、世界不況により低迷した広告市場を尻目に、成長を続けている。

《米スポンサーシップ市場の推移と内訳》

  

古くからスポンサーシップを上手に活用してきたのがタバコ業界で、特にモータースポーツとの関わりは深い。というのも、タバコには健康への悪影響があるため、世界ではテレビCMの放映を禁止している国が多い。そこでタバコメーカーは、1960年代から、四輪のF1やバイクレースのスポンサーになることで、商品のPRをおこなう策に出た。その効果により「マールボロ」「キャメル」「ラッキーストライク」などのブランド(タバコの商品名)は、世界中に知れ渡っている。

しかし近年では、タバコに対する世論が更に厳しくなったことで、モータースポーツへの派手な露出も難しくなってきた。そこで次に目を付けたのが、社会貢献活動に対するスポンサーシップで、貧困、教育、環境、家庭問題などをテーマにした基金の創設や、NPOに対する資金の援助を行っている。

そうした意味で、タバコ会社は、社会貢献団体にとっての“あしながおじさん”になることでイメージの向上を目指しているが、健康を犠牲にして利益を得てきたタバコマネーを受け入れることに反対をする、市民からの声も小さくない。

タバコ会社に限った話ではないが、企業にとっての“スポンサーシップ”は、従来の広告やマーケティングに代わる手法として注目されるもので、有意義な活動をする団体や個人にとっても、資金の新たな調達モデルとして使えるものになりそうだ。ただし、「支援する側」と「支援される側」の利害関係をどのように調整して、付き合い方をしていくのかは、新たなノウハウを開拓していく必要がある。そこで今回は、各分野に登場しているスポンサービジネスの仕組みを学ぶことで、新たなスポンサーシップの形を考えていこう。

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この記事の核となる項目
 ●貧しい子供を支えるチャイルド・スポンサーシップの仕組み
 ●個人が立ち上げる寄付キャンペーンの力と影響力
 ●ソーシャルメディアによる寄付キャンペーンの仕組み
 ●企業が社会貢献のリーダーシップを取る方法
 ●企業が市民と共におこなうコーポレート・シチズンシップ
 ●有機農業を支えるファミリー・スポンサーの役割
 ●日本の若者に対するスポンサー支援の是非
 ●公的奨学金がダメにする学生の実態
 ●新興国の人材発掘に向かう奨学スポンサー
 ●黒船に乗った新興国の知的ワーカーが迫る労働市場の解放
 ●クラウドワーカーが変えていく労働市場と社会事業の方向性
 ●一億総中流が崩壊した日本における相対的貧困者の実態
 ●米寄付社会を後押しするオンライン寄付機能のビジネスモデル
 ●留学生を迎えるホストファミリーが考える自宅の収益プラン
 ●グーグルの人材発掘法に学ぶ、奨学ビジネスへの関わり方


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