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  公共施設の命名権を民間企業に有償で提供する「ネーミングライツ」は日本でも普及してきたが、米国では中学校が理科室のネーミングライツを提供して、実験施設の購入などに充てる収益モデルも登場している。その他、ネーミングライツによる収益化の具体例を紹介。
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小学校が理科室の命名権を売る
ライツセールス市場の最前線
written in 2010/9/23

 技術畑の独立希望者にあるのが、「独自の技術を開発して特許を取得したので、それを活かして起業したい」という相談である。その成否は、技術がどれだけ優れているのかにもよるが、それに加えて「特許の権利をどのように売るか」を考えることが重要である。1件の特許を申請〜取得までにかかる平均費用は、20万〜50万円と言われており、取得後も権利の維持費がかかることから、それをマネタイズ(収益化)するノウハウが無くて、特許を持ち続けるだけでは赤字なのだ。

そのため、大手メーカーでも「できるだけ多くの特許を取得する」という従来の考えから、「収益化の見込みが高い特許に絞って取得する」という方針へと転換してきており、2005年をピークにして、日本の特許出願件数は落ち込んでいる。

《特許出願件数の推移》

  

出願数を絞って、研究開発の費用対効果を高めれば、会社の財務上は健全になるが、将来を先取りした新技術のストックが少なくなることが心配されている。良い意味で“無駄な技術”もメーカーにとって大切な資産と言えるが、数ヶ月のスパンで成果を求められる現在の状況では、非難の対象になってしまう。そこで求められるのは、自社で実用化に至らなかった技術でも、他社に譲渡したり貸し出すことにより、権利収入を得られるための道筋である。

これは製造業だけに限った話ではなく、小売業やサービス業にも、様々な知的財産があって、それを上手く活用している企業ほど、業績を伸ばしている。最もわかりやすいのは、店の商標(ブランドや看板)であり、消費者はそれを頼りに店を選んでいる。コーヒーショップへ行くにしても、スターバックスは世界的に知名度が高くて、知らない街を旅している時でも入りやすい。

そのため、スターバックスのロゴマークは、中国や韓国で、同社と無関係のコーヒーショップから模倣されることが多くて訴訟になっている。日本には全国で7百店以上のスターバックスがあるが、こちらは、米国本社とのフランチャイズ契約に基づくもので、“スターバックス”の商標、ロゴ、技術ノウハウを使用することの対価として、売上の5.5%をロイヤリティとして支払う契約になっている。

《スターバックス本社の権利ビジネス》

  

また、ライターやデザイナーなどのクリエイターも、権利収入を得ることが成功へのステップになる。高年収を稼ぐクリエイターの特徴は、自分が書いた原稿やイラストから、印税や著作権料を得ていることで、従来は有名なプロだけがその恩恵に与ることができたが、いまでは電子出版のプラットフォームが充実してきたことで、アマチュアにも門戸が開かれている。さらに欧米では、人気のある電子書籍の翻訳権を売るビジネスも登場してきた。

こうした権利の売買は「ライツセールス(rights sales)」と呼ばれて市場を拡大している。日本でもよく耳にするようになったのは、スポーツ施設やイベントホールの命名権を売る「ネーミング・ライツ」だが、欧米では電車や船などにも命名権の取引対象となり、ネーミング・ライツの専門業者も存在している。それらの動向を掘り下げなら、ライツセールスの取引対象となる“権利”を収益化するための急所がどこにあるのかを考えていこう。

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この記事の核となる項目
 ●公共施設の命名権を取引仲介するビジネス
 ●小学校が教室の命名権を販売する仕組み
 ●自然学者が発見した新種生物のライツセールス
 ●電子出版時代における権利セールスのスペシャリスト
 ●電子書籍の印税分配を交渉するエージェントの役割
 ●デジタル時代に見直されるヴィンテージ写真の価値
 ●パパラッチの撮影した写真が世界に配信される業界構造
 ●単品ではくポートフォリオ化される特許技術の価値
 ●IT業界の巨人が形成する特許ポートフォリオとは何か?
 ●特許ポートフォリオが生み出すライセンス収入の仕組み
 ●他社の技術を買収してライセンス料を稼ぐ知財投資ビジネス
 ●韓国ゲームの日本語化ビジネスにみるライセンス権の価値
 ●頭で稼ぐ職業に存在する「収入と時間の壁」の乗り越え方


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JNEWS LETTER 2010.9.23
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