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ストリーミング教育で変わる
授業料単価と「学校」の新形態
written in 2010/4/12

 大学に入学して卒業するまでにかかる4年間の費用は、学費の他に通学費用やアパートの家賃までを含めると、公立でおよそ600万円、私立では900万円にもなる。しかも有名大学を狙うということであれば、早い時期からの塾や予備校通いが必要になるし、最近では大学院へ進学する学生も増えていることから、デフレ社会の中でも、教育費だけは毎年上昇している。

しかし、教育にかかる出費を“投資”とみた場合の収益率(利回り)は下落しているのが実態。内閣府の国民生活白書では、大学を卒業するまでにかかる教育費の総額(小学校〜大学までの授業料+塾などの補習教育費)と、社会人になった後に稼げる所得から導いた「大学教育の投資収益率」を算出しているが、それによると、1975年生まれの男性大卒者は6%の利回りを割り込んでいる。

《大学教育の投資収益率》

  大学教育の投資収益率

これまでの教育投資は、将来の所得水準が上昇していくことを前提として、高額の教育費を払っても、高い学歴を取得するほど利回りは高くなるという考えのもとに成り立っていた。しかし、世界からみれば日本の賃金相場は割高で、サラリーマンの生涯賃金が今後も目減りしていくとなれば、その考えを改めなくてはいけない。

  

もちろん“教育の大切さ”は、どんな時代になっても変わらないが、改めるべきは、高い学歴を得るためには高い費用を払うことが当然という、いまの教育界にある常識である。大卒が当たり前になった日本では、学位の価値が暴落しているし、技術の進化が速いITビジネスの現場などでは、学歴だけで人材の優劣を判定することは不可能に近くなっている。こうした状況からすると、今後は「教育」もデフレの対象になっていくと予測できる。

それを後押しするのが、オンライン教育メディアの台頭である。教育にかかるコストは、校舎や研究室などの設備と、教員の人件費、それに教材費などによって決まるが、それらの環境をオンラン化することで、教育にかかる原価を下げることは可能だ。

また、過去に蓄積された知識は、若い世代の人達に伝承していくことが容易である。ネットが普及した今なら、Webサイトやブログの他に、YouTubeやUstream(ユーストリーム)で、授業の様子を世界中にリアルタイム配信することが、ほとんどコストをかけずに実現できる。さらにネット検索をすれば、関連の教材となる資料や論文も見つけることができるだろう。

つまり、一般的なレベルの大学教育なら、4年間で1千万円近い費用をかけなくても、ネットから安価で学ぶことも不可能ではなくなっているのだ。こうした変化の中で、非営利のフリースクールが登場してきたり、従来の“学校”に通わずに、もっと高度な学力をネットだけで身につける天才児教育も登場してきている。そうした時代の、教育制度や学歴はどのように変化して、どんな教育ビジネスが新たに成り立つようになるのかを考えていこう。
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この記事の核となる項目
 ●学歴価値の下落で求められる教育への投資効率
 ●大学教育にかかる費用の世界比較
 ●教育界におけるストリーミング授業の革命
 ●スカイプによる激安オンライン英会話の仕組み
 ●オンライン教育のプラットフォームビジネス動向
 ●電子教材が促進するホームスクール市場と学位授与ビジネス
 ●フリースクールとホームスクールの台頭
 ●eラーニングによる自宅学習から大学受験までの進路
 ●電子教材が変える大学の学位システム
 ●オープンコンテンツ化する教科書の配布スタイル
 ●労働市場に起こる需給バランスの異変と学歴デフレの実態
 ●日米における知的格差を生み出している新たな学歴社会の実態


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JNEWS LETTER 2010.4.12
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