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貧しさから抜け出す知恵を与える ヒップホップビジネス |
written in 2010/3/20
冬季オリンピックでは、スノーボーダー国母選手の服装について世間からの物言いが付いたが、これには世代や立場の違いによって賛否両論が分かれている。常識的な人からみれば、鼻にはピアス、ズボンを腰まで下げた彼のスタイルは“日本を代表するスポーツ選手”として不相応と感じるのは当然かもしれない。
ただし、スノーボートという種目は、米国のストリート文化の中から生まれたもので、スノーボーダーとしての道を追求していくには、彼のような異端児でなくては通用しないと言う支持者も少なくない。日本で「ストリート」は広義の“若者文化”を表しているが、米国ではもっと深い語源があり、家庭が経済的に恵まれず、十分な教育も受けられない“下層階級の若者達の間で広がった文化”という捉え方がされている。古い黒人社会の中で根付いてきた文化とも関係が深い。
最近では、日本の若者にもストリート系のファッションが流行っているが、これは、もともと米国貧困層の中から登場してきたものだ。“貧困層”という言葉の使い方には注意が必要だが、高収入で高い教養を身につけた富裕層と対峙する形で、貧民層の存在が目立つのも米国社会の特徴だ。
日本ならば、貧困=負け組という扱いをされがちだが、米国では貧困の中から様々な文化が生まれて、それを富裕層の人達が模倣したり、憧れや尊敬心を抱いていることが珍しくない。たとえば、ジャズという音楽にしても、その起源は19世紀、米国南部のルイジアナ州ニューオリンズで、南北戦争が終わった後に、軍の兵士が残していった楽器を、黒人の奴隷達が譲り受けたことで生まれ、進化していったと言われている。
やがてその影響を受けて成功した白人アーチストが、黒人音楽をリスペクトしていることを公言することで、彼らのファン達も、貧しかった黒人社会の文化に畏敬の念を抱くようになった。いまではジャズファンの大半が白人である。そして近頃では、若者達の間で、同じ貧困社会の流れを受け継いだ「ヒップホップ(hip hop)文化」が人気となっている。
ヒップホップ音楽の中で綴られるリリック(歌詞)では、米国の貧困社会にある暴力やドラッグとの関わりが赤裸々に表現されているため、一般層からは誤解されがちだが、そこにある本質は、貧しさから這い上がるために知識(知恵)を磨くことや、仲間との信頼関係、家族を愛することの大切さなどが説かれている。
米国のヒップホップは1970年代から登場してきたものだが、そこでハングリー精神や友愛の心を学んだ者の中からは、偉大な事業家として成功したり、大学教授にまで昇りつめる人までいて、“貧困”が決して負け組の巣窟でないことを示している。こうしたヒップホップ文化を支持する人達は層が厚いために、消費(購買)の行動や政治にも影響を与えはじめており、大企業や国も無視できない動きになっている。
そこで今回は、いわゆる“貧困”をテーマとして、そこから登場してくるビジネスを掘り下げてみたいが、これは日本国内で色々と紹介されている「弱者を食い物にした貧困ビジネス」とは違い、本当の意味での弱者支援、そして前向きな反骨精神による成功モデルとヒップホップ文化との関係を解説していくことにしよう。
(注目の新規事業一覧へ)
●日本で急増する貧困層の実態について
●絶対的な貧困者と相対的な貧困者の違い
●先進国の相対的貧困率からわかること
●貧困文化に慣れていない日本社会の特徴
●貧困を前向きなエネルギーに変えた米ヒップホップ文化
●貧困層から生まれるヒップホップ市場の広がり
●既存の体制に頼らないヒップホップ・ビジネスの成功モデル
●ヒップホップから生まれる社会事業の影響力
●ルイ・ヴィトンは買わずに借りる時代の新ステイタスと資産形成
●雇われない働き方へと移行する頭脳をウリにしたプロ人材
JNEWS LETTER 2010.3.20
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