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市民スポーツを収益化する発想と ウォーキングツアー事業 |
written in 2010/2/10
スポーツビジネスの花形といえばプロ野球。その中でも巨人は最も多くのファンを持つ頂点のチームだが、東京ドームにおける観客動員数は 1990年に360万人だったのが、2009年には 293万人にまで減少している。テレビ観戦される視聴率はもっと深刻で、1980年代は平均25%で推移していたのが、最近では9%台にまで低迷している。
優良球団と言われる巨人がそんな状況であれば、他球団は言うに及ばず、大半は赤字経営であり、回復の見通しは立っていない。サッカーのJリーグも同様で、国内のプロスポーツ業界はいま重大な岐路に立たされている。
その背景には、一般層の娯楽が多様化して“スポーツ観戦”に対する関心が薄れてきたことがある。野球の平均試合時間は約3時間、サッカーもハーフタイムを入れると約2時間と、他にも娯楽の選択肢がたくさんある現代人にとっては、「長くてつまらない」と感じてしまうことも多いようである。
だからと言って、スポーツ自体に熱意を失ってしまったわけではなく、プロの試合を観戦するよりも、“自分も参加すること”で充実感を得られる市民スポーツのほうに興味が移っている。これには、学生の頃から密かに抱いていたスポーツへの情熱を、ネットコミュニティなどで同じ気持ちの仲間と出会うことで再燃させて、試合やイベントへ容易に参加できるようになったことも大きい。
アマチュアスポーツの良いところは、所得の差に関係なくすべての人が楽しめることで、道具を揃えるのにお金のかかるカメラや楽器などの趣味に比べると敷居が低い。さらに健康にも良いということで、若者から高齢者までが何らかのスポーツを楽しむようになっている。
笹川スポーツ財団の「スポーツライフに関する調査」によると、週2回以上、1回30分以上、ややきつい運動をする“アクティブ・スポーツ人口”は1990年代よりも2倍以上に増えている。
《国内でスポーツをする人の割合》
| 週1回以上 | 週2回以上 | アクティブ |
1992年 | 23.7% | 16.2% | 6.5% |
1996年 | 40.6% | 30.2% | 9.6% |
2000年 | 51.4% | 40.8% | 17.6% |
2004年 | 55.4% | 45.3% | 16.1% |
2008年 | 56.4% | 45.5% | 17.4% |
※「アクティブ」は週2回以上、30分以上、ややきつい運動をする人
※出所:笹川スポーツ財団
市民スポーツの人気は草の根的に盛り上がってきているばかりでなく、仕掛け人も存在している。東京都では2007年から、市民参加型による「東京マラソン」を開催しているが、2009年大会の参加者は定員が3万5千人に対して、申込者は26万人(競争倍率7.5倍)という超人気ぶり。一昨年の 2008年大会より68%も申込者が増加しているという状況だ。
東京都はこのマラソン大会を、市民スポーツ事業として成長させていくために運営組織を法人化して、企業との連携や社会貢献事業へも結びつけようとしている。従来のスポーツビジネスは、プロ化したチームの観戦チケットやテレビ放映権を売ることが主体であったが、近年ではネットによる口コミ効果も手伝って、市民参加型のスポーツ事業がビジネスとしても成り立つようになってきた。では、そこからの収益がどのように生み出されていくのかを見ていくことにしよう。
(注目の新規事業一覧へ)
●広く支持される市民スポーツの特徴
●観光客を集めるウォーキングツアーの事業モデル
●東京マラソンが手本にする市民マラソン大会のビジネスモデル
●熱狂ランナーを呼ぶマラソン大会のクリティカルマス
●マラソン大会を起点としたチャリティビジネス
●ロンドンマラソンの慈善事業モデル
●ハンディのあるランナーを支援する企業との提携モデル
●教員高齢化の裏にある少年スポーツチーム支援ビジネス
●少年スポーツチームと営利ビジネスの接点
●感動をウリにする第5次ビジネスの正体と消費者の欲求願望
●通勤サイクリストが急増するクリティカルマスの社会現象
●荒廃した公立学校を再生する教育ベンチャーの役割と商機
●部活動を外部委託する動きと地域スポーツクラブの収益事業化
JNEWS LETTER 2010.2.10
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