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遺伝子検査で白黒を判定する 次世代の医療と保険システム |
written in 2009/9/23
犯罪捜査では、わずか数本の毛髪を鑑定することで大麻や覚醒剤の使用歴を明らかにすることができる。また DNA鑑定では体液などの証拠から99.9%以上の確率で犯人を識別することが可能だ。その過程では、菅谷さん事件のような、えん罪の不幸もあったわけだが、前向きな研究開発によって現在では DNAが容疑者のものか否かを特定できる精度は数兆分の一というレベルにまで進歩している。そして犯罪以外でも、このような科学検査を活用することで、我々の生活の中にある様々な疑問や謎を解き明かすことが可能になっている。
たとえば、健康維持の栄養補給にサプリメントを常用している人は多いが、毎日飲んでいる錠剤が、果たして本当に体内で効いているのかを確認することは難しい。大方の人は、広告や友人からのススメによって、いま流行している銘柄のサプリを“健康に良い”と信じて飲んでいるのが実情だろう。
しかし効果のあるサプリメントでも、その人の体質によって向き不向きがあり、自分に合わないものを飲み続けていれば、逆にそれが原因で体調を崩してしまうこともある。そこで簡単な毛髪検査を受けると、体内で不足している栄養の数値を調べられるサービスが登場しており、その診断結果から正しいサプリメントを選ぶことができるようになっている。さらに詳しい自分の体質を知りたいのであれば、各種の DNA検査を受けることで、自分が近い将来に発症しやすい病気の傾向まで調べることもできる。
科学の進歩は、これまで我々が知ることができなかった生命や健康についての真実を解き明かすことを可能にしてくれるが、それによって人生観、宗教観、家族の在り方までも変わろうとしている。先祖のことを調べようとしても、祖父母や曾祖父母辺の辺りまでさかのぼれば、痕跡は途絶えてしまうのが普通で、戸籍制度が整備されていなかった江戸時代の先祖がどんな人だったのかまでを知ることは難しかった。
ところが自分の DNAからは、先祖のプロフィールを科学的に解き明かすことができる。知ることが良いか悪いかは別として、もしも自分の顔立ちが“日本人離れしている”と言われたことのある人なら、意外な真実がわかるかもしれないし、遠い地で自分と血縁関係のある子孫に出会える可能性もある。これを最新の医療に結びつけると、自分が先祖と同じ病気に罹らないための健康法や食事の内容を取り入れることができるようになる。
そうしてみると、家族が亡くなった時の葬儀というのは、単なる儀式としてではなく、故人の身体情報や記録を永久保存する作業としての意味が強くなってくるかもしれない。実際に米国では DNAを保存しておくためのバンキングサービスが新たな市場を形成している。
日本では火葬〜納骨するのが習慣だが、高齢化で亡くなる人の数が増えれば、その数だけ墓地を増やすことは難しく、海や山への散骨にしても同様だ。それなら遺骨に拘るよりも、故人の DNAをわずか数センチのカプセルに納めて保存するほうが環境面で優しく、子孫に残せる情報量も圧倒的に大きい。もちろん科学の力が、伝統的な宗教を超えられない部分はあるにしても、健康や生命の世界にもアナログからデジタルへの変化は訪れており、その時代に生まれる新ビジネスにはどんなものがあるのかを見ていくことにしよう。
(注目の新規事業一覧へ)
●科学の力で飛躍する在宅健康ビジネス
●毛髪検査からサプリメント販売への流れ
●生涯の健康情報を管理するパーソナルヘルスレコードの思惑
●自分の生涯カルテを持ち歩く時代の到来
●パーソナルヘルスレコード事業参入への視点
●マイクロソフトが提唱するPHRのコンセプト
●遺伝子検査で白黒を判定する次世代の医療と保険システム
●疾病スクリーニングで医療費を抑える方法
●アナログからデジタルへ変わる家族関係
●Health2.0型サービスが狙う医療ビジネスの参入ポイント
●宗教界が揺れる仮想墓地のコンセプトとサイバー宗教の動き
●在宅健康管理サービスと赤字化する健康保険事業の深い関係
JNEWS LETTER 2009.9.23
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