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非営利から商用化への道を歩き始める マイクロファイナンス |
written in 2009/7/18
昨年6月に全国で支給された定額給付金によって、巷のショッピングセンターでは一時的な混雑がみられたが、失業率が5%を超えている状況では一般市民の生活にかなりの不景気感が漂っていることに変わりはない。自力での生計が難しなり、生活保護を受けているのは約117万世帯(163万人)で、好景気の恩恵をまだ受けることができた1990年代の生活保護世帯が約60万件であったことと比べると急増している。
生活保護とまではいかなくても、サラリーマンの平均年収下落に歯止めがかからない状況では、困窮世帯が増えていることは間違いなく、子どもの給食費や医療費の未払いも新たな社会問題として浮上してきた。日常生活の中で何気ない支払いに行き詰まるケースは、これから各所でみられるだろう。
生活費に窮する世帯が増えていることには、もちろん経済情勢の悪化が影響しているが、もう一つの要因として、従来の消費者金融業界が貸出しを絞ってきていることも挙げられる。長年にわたって業界の慣習として続けられていた、年率で30%近い高金利(グレーゾーン金利)に対する規制が行なわれて、実質的な金利が10〜15%引き下げられたことにより、消費者金融業者は「甘い審査、無担保、無保証人による融資の対価として高い利息を受け取る」というビジネスモデルが成り立たなくなり、金融庁に登録されている貸金業者の数は1999年に約3万社あったのが、2009年には6千社までに減少しているのだ。
《合法的な貸金業者の推移》
消費者金融大手の4社(アコム、プロミス、アイフル、武富士)にしても、貸出残高はピーク時よりも3割近く減少している上に、利益率(貸出金利)も引き下げられているため厳しい経営状況になっている。さらに改正された貸金業法ではローン利用者に対して「年収の3分の1を上回って貸してはいけない」という総量規制が2010年から正式に施行されるため、貸金残高はさらに減ることが予測できる。
このような貸金業界を健全化させる動きに対して、有識者は「ローン地獄に陥っていた人達を救える」と前向きなコメントを出すのが通例だが、現実にはそれほど簡単な問題では済まないようである。実際にどれだけの人が消費者ローンを利用してきたのかと言えば 約800万人で、これは国内の成人人口に対して約1割にもなり、消費者金融(サラ金業者)を単純に悪者扱いにするのでは済まない規模になっているのだ。
さらに消費者に融通されていたローン資金は約10兆円にもなり、それが日常の生活費として使われている他、消費者金融と銀行が提携している自動車ローンや教育ローンなどの分も含めれば潜在市場は20兆円とも言われている。これら資金の供給元が絶たれることが市中の経済に与える影響は想像以上に大きいのである。
そこで高金利型の消費者ローンに代わる庶民向けの金融サービスが求められるようになっており、「市民金融」「ソーシャル金融」という言葉が登場してきている。これは営利を追求した金融サービスではなく、生活者の支援を真の目的として非営利で低金利の融資を実現させようとするものだ。世界的な動きとして「マイクロファイナンス」や「マイクロクレジット」といった貧困者や低所得者層向けの小口融資モデルも開発されて、これこそ弱者救済のための理想的な金融サービスという評価を得ている。
しかしその論調を丸ごと信じてしまうことには危険が伴う。人類の歴史で、お金の貸し借りは最もシビアな取引であり、善人を装っているだけでは成り立たない難しいビジネスだ。東京都が石原知事の号令により、中小企業にとって理想となる「株式会社新銀行東京」を立ち上げたものの、多額の累積赤字に苦しんでいることからもわかるように、善良なだけでは借り手から甘く見られて大損をしてしまうリスクがある。もちろん弱者救済を旗印にして、理想的な金融サービスを追求することに社会的な意義は大きいが、万が一、融資が貸倒れになった時にどんな対策を取るのかを事前に講じておく必要がある。それを踏まえた上で、今後の市民向け金融サービスにはどんなビジネスモデルが考えられるのかを見ていくことにしよう。
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JNEWS LETTER 2009.7.18
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