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自費診療で“成人式あと一回分”の人生を得る 新たな価値観 |
written in 2009/7/4
もしも不治の病に罹って“余命6ヶ月”と宣告された時、あなたならどうするだろうか?担当医の言葉を素直に受け入れて、残された時間を有意義に過ごそうとするか、もっと前向きに良い治療法や名医はいないものかと、あの手この手を使って探そうとするか。いずれの考えも間違いではなく、患者や家族の価値観によって決めるべき問題だろう。
ただし医療の技術は飛躍的に進歩していて、治療方法の選択肢は増えている。たとえば、従来は手術が困難と判断されていたような、難しい部位にある腫瘍の摘出手術でも、最近ではロボットによる手術が実用化されて成功確率が高くなっている。これは医師の手の代わりとして、ロボットアームがメスを握り、緻密な切開や縫合を行なうために、難易度が高い手術でも出血量が少なくて感染症のリスクも低い。これなら、以前は諦めるしかなかった症例でも、手術が可能だ。
また、国会で審議されている臓器移植法の改正が正式に決まれば、脳死を人の死として判定し、生前に本人が拒否していなければ、家族の同意によって年齢に関係なく臓器移植をすることが可能になる。それに伴い、新しい健康保険証には臓器提供の意思表示欄が設けられて、自分の死後に提供してもよい臓器に印を付けるようになっている。心肺がまだ動いている状態で“死亡”と判定することには賛否両論があるが、臓器の提供によって命が救われる人が増えることの意味は大きい。日本臓器移植ネットワークの統計によると、いま臓器提供を待っている患者(待機者)は1万2千人以上いるのに対して、実際に臓器提供が成立しているのは100件程度(2008年)しかない。
そのため、どうしても早急な臓器移植を望むのであれば、海外へ渡航してドナー(臓器提供者)を見つけるしかない。海外での移植手術にかかる費用は、渡航地によって異なっており、最も高度な医療が受けられる米国なら、腎臓移植で2000万円前後、それより難易度が高い肝臓や心臓の移植なら1億円を超すこともある。そこまでの資金はないということで、中国やフィリピンでドナーと病院を探せば3分の1以下の費用になるが、手術の成功確率や安全面では米国よりも劣ることは否めない。それでも日本国内で何もしない待機状態のままよりは、命が助かる可能性は高くなる。
このように現代の医療は、患者側の予算に応じて“松・竹・梅”どころか、もっと多様なメニューが用意されている。さらに身近な話で言えば、地元の病院に入院する際に「病室を相部屋(大部屋)にするか、個室にするか」という選択肢がある。大部屋には追加料金はかからないが、個室なら一日あたり5千円〜1万円、ホテルのような特別個室になると一日5万円以上の差額室料を患者側が自己負担しなくてはならない。
各家庭の懐具合からすれば、リーズナブルな大部屋で済ませたいところでも、病院側から、症状の重さに応じて個室を勧められたら断れないのが実情だろう。しかし入院費が月額15万〜30万円加算されるとなれば、経済的に相当苦しくなる。
そこで重要なのは、患者の症状や家庭の経済状況に応じて、最も適正な医療サービスを選択できるスペシャリストの存在だ。各病院には“ソーシャルワーカー”といった肩書きの人達がいて、患者家族からの相談に応じているものの、所詮は病院側のスタッフであるため、病院にとって都合が良い(儲かる)サービスを勧めてくるという話はよくあり、不当に高い医療費を請求されるトラブルが増えている。これからの時代に、自分や家族が良質な医療を受けて長寿を生きるには、医療の詳しい知識を持ち、病院や医師との仲介や交渉ができるスペシャリストをブレーンに持つことが欠かせなくなる。その新職種について追いかけてみよう。
(注目の新規事業一覧へ)
●患者の懐具合によって決められる医療サービスの松・竹・梅
●命の沙汰も金次第の最新医療ビジネス
●自費で雇う医療コーディネーターへの期待と先進医療の動向
●患者が自費で雇う医療コーディネーター職の役割
●美容整形・歯科から始まる国境を越えた医療サービス
●海外美容整形ツアーを仕掛けるコーディネート業者
●不妊治療にみる先進医療の仲介ビジネス
●平均寿命の陰に隠れた長寿人口の国際格差とは
●世界で拡大するベジタリアン市場と崩壊する日本の食文化
●Health2.0型サービスが狙う医療ビジネスの参入ポイント
●中年オヤジはなぜ太るのか?日本人向けダイエットの誤解
●アンチエイジングと薄毛治療からみた自由診療ビジネス
●晩婚化と少子化が成長させる妊娠・出産のスペシャリスト市場
●常識の枠を超えて急拡大する家族仲介ビジネスへの需要
JNEWS LETTER 2009.7.4
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