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身近にいる情報スパイと
転職者による社内ノウハウの流出
written in 2008/5/19

 ある経営者が転職者の採用面接が終わった後に、「うちの会社に似合わないほど優秀な人が応募してきた時には気を付けたほうがいい」と語ったことがある。この会社は社員が30名前後と規模は小さいが、電子機器の設計に関する独自の技術を多数持っていて、業界内では一目置かれている存在だ。そのため優秀な人材が門を叩くのは頷けるのだが、その志望動機として多いのは、会社に魅力を感じているというよりも、「どのように新技術を開発しているのかを学びたい」というものだ。それが一概に悪いというわけではないが、最初から2、3年で辞めることを前提にして、ノウハウの習得だけを目的に入社してくる人材は会社にとってプラスどころか、マイナスになるリスクをはらんでいる。

企業にとっての知的資産といえば、特許、商標、著作権など、既に権利が確定しているものを指すのが一般的だが、それ以外でも、技術開発の進め方、セールスの方法、顧客対応のマニュアルなど、形のない貴重な知的資産は社内に多数存在している。近頃ではそれらが「営業秘密」と呼ばれて、社内からの流出を防がなくてはいけないという意識が高まっている。この背景には、雇用体系の変化によって昔よりも人材の入れ替わりが激しくなっていることや、電子的に記録された業務データの持ち出しがしやすくなったことの他に、中国など海外企業との提携によって“営業秘密”に該当する情報やノウハウが他国へ大量に流出しはじめていることがある。

近年の日本では「個人(顧客)情報の管理」については、どの会社でも神経質なほど気を遣うようになったが、営業秘密の流出については全くの無防備であるケースが少なくない。「経済スパイ」というと、映画の中だけにある話と思うかもしれないが、現実のビジネス界でも頻繁に行われていて、転職者が新しい勤め先で前職の機密情報を語ることはスパイ行為に該当するし、その“手みやげ”を期待して転職者を雇い入れる会社も同罪である。現代では映画007のジェームズ・ボンドのように危ない橋を渡らなくても、転職者を利用して機密情報を入手することが容易になっているのだ。

それではどんな情報収集までが許されて、どこからスパイ行為なのかという境界線はどこにあるのだろうか?企業のサーバーをハッキングして重要なデータを盗もうとすることは誰が見ても違法だとわかるが、その会社に勤める社員や退職者が何の悪気もなく、社内の話を外ですることはよくある。現実に社内の秘密が外部に漏れるのは、外部からのハッキングよりも、内部関係者(社員や元社員)が流出源になっていることが圧倒的に多い。

そうかといって社員が会社の外で仕事の話をまったくしないように規制することは不可能なため、どこまでの話ならOKで、どこから先がNGなのかを会社の営業秘密に関するルールとして明確に決めていく必要があるが、その対策サービスに関しては国内で未開拓の領域がたくさん残されている。そこで「社内の秘密を守ること」について、どんな商機があるのかを見ていくことにしよう。
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この記事の核となる項目
 ●意外と身近にいるスパイと諜報活動
 ●知的財産として浮上する営業秘密の価値とスパイ対策市場
 ●社内のノウハウを秘密化するための条件
 ●保管方法で異なる社内情報の価値
 ●企業に求められるスパイ対策市場
 ●情報が漏れないゴミ箱を貸し出すシュレッダー業者のビジネス
 ●会社の“秘伝のタレ”はどのようにして守ればよいのか?
 ●ビジネスにおける“秘伝のタレ”を作る方法
 ●味方から欺く営業秘密の隠し方と情報管理の方法


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