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変化する近所付き合いのスタイルと 町内会・自治会の役割 |
written in 2007/11/19
都会では「隣に住んでいる人の顔を知らない」ということが珍しくなくなって相当の年月が経つ。映画「ALWAYS・三丁目の夕日」の舞台になっているような昭和の良き時代には、夕飯のおかずをご近所にお裾分けに行くという光景が各所で見られたものだが、今では隣家のドアをノックしただけでインターホン越しに煙たがれるという始末だ。そんな状況をみて「現代では近所付き合いを嫌う人が増えている」という意見もあるが、果たして本当にそうなのだろうか?
そこで昨年にある地域で起きた空き巣事件の話を紹介しておこう。一人暮らしの中年サラリーマンが深夜12時過ぎに自宅に帰ってみると、ガラスが割れて部屋の中が荒らされている状態。一瞬何が起きたのかわからずに動揺した彼は、すぐに 110番へ通報するという機転が利かずに、無意識のうちに隣家数件のチャイムを鳴らして助けを求めたのだ。普段なら、こんな真夜中になんと非常識な人かと怪訝な扱いをするだろう隣人達も、彼のただならぬ様子にビックリして警察への通報から鑑識の立ち会いを朝方まで協力してくれたのだった。
じつは近所の人達がじっくり顔を合わせて話をしたのはこれが初めてのことで、それまでは回覧板のやり取りくらいしかなかったのが、その事件以降は頻繁に挨拶もするようになり、夏の夜にはバーベキュー大会を皆でするまでに仲良くなった。皮肉にもその空き巣犯がご近所の縁を取り持った形だ。
警察や消防の話によると、じつはそんな話が各地でたくさんあるという。放火事件が頻発する地域では、近隣の住民が自主的なパトロールチームを結成することが多いのだが、そこで生まれた人間関係が事件解決後も、近所付き合いに役立っているという。どうやら「ご近所の人達と仲良くなりたい」という気持ちは、どの人の心の中にもあるようだ。昔ならば地域のお祭りや奉仕活動などを機会にしてご近所同士が仲良くなったものだが、現代では各家庭でライフスタイルが違うこともあって、仲良くなるきっかけが掴めないままでいるのだろう。国民生活白書の中では、これを「地域のサラリーマン化」と分析している。
だからと言って週末には皆で共通の地域活動をしましょうなどと呼びかけるのも少し違う。下手にそんな提案をすれば自分が幹事役(世話役)となって余計な仕事を押しつけられてしまうかもしれない。ご近所付き合いというのは、隣人に無関心すぎてもいけないし、こちらからあまりお節介なことを言い過ぎても駄目で、そのさじ加減が非常に難しい。自分たちの住む街の環境や治安を悪化させずに快適に暮らすには、近所の人間関係を円滑にすることが欠かせないのだが、それを当事者間の自主的な運営(従来の自治会のような)に任せていただけでは、なかなか上手くいかない。じつはそこに企業として取り組める新ビジネスのネタがある。
街の清掃活動、防災活動、子供や高齢者の世話、地域の各種イベントやお祭りなど、これまでの地域活動は国や自治体と地域住民との間で取り組まれてきたが、それだけでは上手く機能しなくなっているのが実態。町内には自治会の組織があるものの、その世話役(役員)を誰が引き受けるのかという話し合いは毎年難航しているし、なぜ自分だけが無償でそんな面倒な仕事を引き受けなくてはいけないという意見もある。そこでいっそのこと、地域の仕事を業者にアウトソーシングしてしまえば楽ではないかという案もあるが、その費用を税金で賄う余裕はないし、住民がそれぞれ負担するというのも難しい。そこで企業(業者)側が地域サービスを提供して料金はタダでも構わないですよ、という地域との共生ビジネスが注目されている。ただしそこには企業なりの算盤勘定が当然ながら存在している。
(注目の新規事業一覧へ)
●変化する“ご近所付き合い”のスタイル
●町内会との提携で潤う古紙回収ビジネス
●変化する地域住民との連絡ツールと電子町内会の仕組み
●企業スポンサーの誘致による電子町内会の運営モデル
●ご近所付き合いを収益事業化する発想と企業との関わり方
●企業と地域サークルとが共生するビジネス
●地域活動(近所付き合い)の収益化と企業スポンサーの獲得
●部活動を外部委託する動きと地域スポーツクラブの収益事業化
●米国で勢力を拡大する退職者団体の方向性と人材バンク事業
●同窓会ブームで浮上する"再会"を支援するリユニオン市場
JNEWS LETTER 2007.11.19
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