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  各企業が富裕層向けのビジネスを展開するにあたり必要になるのが、高級な接客サービスができる人材である。その育成と供給役を欧米ではホテルスクルールが担当している。顧客を丁重にもてなすことにより、客単価を向上させることは、新たな経営学の分野として注目されている。
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接客のプロを養成するホテルスクールの役割と
もてなし経営学
written in 2007/7/26

 いま人材紹介会社に企業からの依頼が多いのが「接客のプロ」と呼べる人材を探してほしいという依頼である。“おもてなし”という言葉がよく聞かれるようになったことからもわかるように、これまでよりも丁寧な対応で来店客をもてなそうとする風潮が小売業やサービス業の中で高まっている。というのも、消費の傾向が低価格品と高級品へと急速に二極分化しているためで、店に客を呼び込むスタイルの店舗商売では高級志向の消費者を掴んでいかなくてはならない事情があるためだ。

二極分化のうちの一つ、低価格品についてはセルフサービス化の波が急速に進んでいて、特別な接客はいらないからできるだけ安く買い物をしようとする流れ。ネット通販で一番安い店を探して購入するのはそのわかりやすい例といえる。その一方で、自分がこだわりを持つ分野の商材やサービスに関しては、高いお金を払っても惜しくないという高級志向の価値観も育ってきている。たとえば腕時計の業界では、以前なら10万円以上が“高級時計”といわれていたが、最近ではブレゲやブランパンといったブランドの数百万円から1千万円を超す超高級時計が売れ始めている。“時刻を知る”という時計本来の機能だけなら数千円のクオーツ時計でも事足りるのだが、機械式時計の歯車が刻む音に工芸品や芸術品としての価値を見つけたユーザーは、次第に奥深い世界へ入り込んでいくようだ。

そうなると時計屋の商売としては1万円の腕時計を買う客を百人集めるよりも、百万円以上の時計を買ってくれる客だけを少数限定で相手にしたほうが賢いということになる。そうすれば一人あたりに接客できる時間や質は向上するため、上等な客だけを固定客として育てることができるわけだ。

自動車業界にしても一般的な客の購入単価は新車で2百万円前後、中古車では90万円台という水準で、その平均値はさらに下落してきている。しかし一方では、5百万円以上する車を購入する層は厚くなっていることから、国内向けの販売市場では顧客の選別が重要な課題になっている。高級品市場の成長に伴い、その販売にふさわしい店員の採用や育成は不可欠だが、意外なことにこれまでの日本では高度な接客の知識を身につけた“接客のプロ人材”というものが存在していない。

これは、日本では長らく中流意識が根強かったため中級品の販売シェアが高く、あまりに丁寧な接客をする必要性がなかったためだが、現在では中級品のシェアが落ちて、低価格品(低級品)と高価格品(高級品)のシェアが伸びているため、低価格品の販売はセルフサービス型の通信販売に任せて、店舗では高級品に特化した販売ノウハウ(接客ノウハウ)を習得することが急務となっている。そこにはホスピタリティ(もてなしの技術)に関連した商機がいろいろと浮上してきている。
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この記事の核となる項目
 ●接客のプロを養成するホテルスクールの役割
 ●MBAと同等の学位が与えられる接客の専門家
 ●おもてなしのプロ人材が求められる理由とソムリエの算盤勘定
 ●ホスピタリティ業界向けに特化している人材サービス
 ●日本国内におけるホスピタリティ人材の不足について
 ●ワインブームとソムリエ育成ビジネスの関係
 ●VIP客の判定技術とホスピタリティによる究極の顧客選別法
 ●IT化で人手によるもてなしの限界を超える方法
 ●VIP客の判定をするレストラン予約機能の仕組み
 ●ホスピタリティにみる究極の顧客選別法とは
 ●高級サービスをウリにした隠れ家的商売と自宅店舗の採算
 ●優良顧客を主体にニーズが高まるプライベートサービスの波
 ●格差社会に仕掛けられた“勝ち組”の虚像と真の顧客ターゲット


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