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  ロングテールの代表事例としてアマゾンが取り上げられることが多いが、それが必ずしも正しい解釈とはいえない。本当の意味でロングテール戦略を成功させているのは、超専門性をウリにした零細業者のほうである。
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ロングテール市場に求められる
超専門性の築き方と商圏法則
written in 2006/7/14

 その店がターゲットとすることができる商圏テリトリーは、店舗経営者の努力や工夫によって広げることが可能だ。そのわかりやすい取り組みとして駐車場の台数を豊富に確保することで商圏が拡大することはよく知られている。駐車場が広くて停めやすい店ほど遠方からでも来店しようとする顧客が増えるという特性は確かにある。

しかし近頃では、幹線道路から外れたウラ路地で目立った看板もなく、知らなければ通り過ぎてしまうような個人経営の店が、じつは知る人ぞ知る超人気店だったという例が全国的に増えている。そんな店の多くは、一般の消費者にはあまり馴染みがなくても、特定分野の深い消費者からは熱い支持を受けている。店の名前をネット検索してみれば、人気の理由がわかるはずである。

「ロングテール」という言葉を耳にするようになって久しいが、消費者の嗜好はより専門的な方向へと進んでいる。ロングテールの代表事例としてアマゾンが取り上げられることが多いが、それが必ずしも正しい解釈とはいえない。アマゾンは全方位的にあらゆる商材を取扱っていて、従来のヘッド部(頭)にあたる人気商品だけに売上を依存せずに、テール部(尾)の売上を伸ばしている。しかしその舞台裏では、ロングテールの需要に対応するために、あらゆる商材(約100万種類)を取り揃えておくだけの負担は並大抵のものではない。

零細事業者はもともと、市場のヘッド部を大手企業に差し出しておき、テール部だけを自分のテリトリーとしてきたため、本来のテール戦略はアマゾンよりも得意なはずである。ロングテールの恩恵を受けている零細事業者は、じつはネット、リアルの区別なく存在している。これからの中小ビジネスに求められるのは、アマゾンのようにありとあらゆる在庫を揃えてロングテールの需要(すそ野が広い商品需要)に耐えうるだけの店舗規模を拡大するのではなく、逆に中途半端な広告などしなくても顧客が口コミで集まるだけの“超専門性”を持つことである。専門性よりもさらに深い領域に入り込んだ超専門性こそがロングテールの最先端にあたる部分だ。

超専門性は「サブスペシャリティ」とも呼ばれ、これからのビジネスでは専門性(スペシャリティ)をさらに深めたサブスペシャリティの専門領域を確立することが急所だ。それが具体的にどんなことなのかを、現実に巻き起こっている消費者行動の変化から追求してみたい。
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この記事の核となる項目
 ●医療業界におけるロングテールと超専門医の台頭
 ●米国における不妊治療の超専門サービス
 ●不妊夫婦が渡米して代理出産するまでの業界構造
 ●熱狂的なクルマ愛好者が生み出すロングテール市場
 ●整備ノウハウを売るベンツ専用の部品販売サイト
 ●ビジネスの規模で考える損益分岐点とロングテール市場の捉え方
 ●新規事業計画におけるニッチ市場の掘り起こしとセンスの磨き方
 ●ニッチメディアが生み出すオンラインジャーナリズムの特性
 ●スポーツ用品業界にみる大型店の失敗と超専門店化への活路


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