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  商品を先に渡しておいて、客が実際に利用した分だけ後払いで料金を徴収する“置き薬”の商法がデジタルコンテンツにも応用されている。これは「超流通」と呼ばれる新たな販売手法で、コンテンツが自由にコピーされて広がるほど儲かる仕組みになっている。
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デジタル時代の置き薬商法、
超流通ビジネスの仕組みと収益構造
written in 2006/3/14

 本や映画がデジタル化されることの最大の欠点は、簡単に不正コピー(複製)できてしまうことにある。そのためコンテンツ業界はコピーを防止するために多額の投資を行ってきた。しかし、どんな防衛策を試みても必ずそれを打ち破る方法が生まれて際限がない。そこでコピーを防止するという発想を 180度転換して逆手にとり、むしろコピーされることでいっそう収益を上げられる方法として「超流通」という仕組みが考案されている。

「超流通(super distribution)」の発想は、実はそれほど目新しいものではなく、パソコンが世間に登場し始めた1980年代に考案されている。当時筑波大学教授だった森亮一氏が、ソフトウエアなどのデジタルコンテンツを利用する際の課金方法として、置き薬をモデルにした概念を提唱した。商品自体は消費者の手元に常にあり、使いたい時だけ使い、後で使った分だけお金を払えばよい、という形だ。

この考え方が画期的なのは、使ったことに対してのみ支払いが発生することで、商品そのものを手に入れることに対して料金はかからない点にある。そして、消費者は商品をどんな方法や経路で手に入れても問われない。つまり、正規の供給ルートから入手する消費者もいれば、複製品を入手する消費者もいる。しかしどちらにも等しく支払いは生じる、ということを実現しようというのが「超流通」という仕組みの核心である。

しかし当時はまだこのような考え方をするのは少数派で、不正コピー防止を主軸とした著作権管理を各社共に推し進めてきたが、ここ数年でブロードバンドや大容量ハードディスクなどのインフラ充実により、コンテンツ配信の環境が大きく変化してきていることから、にわかに「コピーされるほど儲かる仕組み」として超流通への注目が高まっている。

その具体的な動きとして、トヨタの新ブランド、レクサス車に標準装備されるカーナビのハードディスクには、すでに最新の音楽データがインストールされていて、ドライバーはアクセスキー(楽曲を聴くための鍵)を購入することで、すぐに好きな曲を楽しむことができる。この方法であれば、わざわざショップまでCDを買いに行くよりも気軽に楽曲を購入することができる。このような“置き薬方式”の販売手法は音楽に限らず、様々なデジタル商品において導入することが可能だ。今回はそんな超流通ビジネスの最新動向に迫ってみたい。
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この記事の核となる項目
 ●置き薬方式として見る超流通の特徴
 ●超流通による映画鑑賞のライセンス形態
 ●すでにインフラが整っている超流通の技術動向
 ●電子メールの添付ファイルをライセンス管理する技術
 ●超流通はコピーの連鎖で収益を上げる仕組み
 ●ユーザーが自由にコピーして再販するバイラル的超流通
 ●バイラル的超流通による音楽販売の流れ
 ●ハードディスク製品の普及で躍進する超流通ビジネス
 ●複雑化する流通経路に求められるアグリゲイターの役割と魅力
 ●アグリゲーターが変えるコンテンツ業界と知的権利の流通機能
 ●クリエイターの仕事が「資産」として価値を高めていく新潮流
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