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ソースコード開示を求められる ソウトウエア業界の生き残り策 |
written in 2006/3/9
あるシステム開発会社がクライアントからのオーダーで制作したソフトウエアを納品する際に「ソースコードも付けてくれませんか?」と頼まれた。この依頼に応じるべきか断るべきか、そんな議論が最近よく聞かれるようになっている。ソースコードというのは、プログラミング言語で記述したソフトウエアの設計図のことで、通常は開発者の元で管理されて、クライアントに手渡すことはしないのが普通だ。
しかしクライアント側の中には、高い開発費を支払ったことの対価としてソースコードも受け取りたいと主張するケースが増えている。システム開発会社や技術者にしてみると、ソースコードの譲渡は知財の流失や独占的な権利の喪失につながる懸念があるため、できることなら応じたくないという姿勢だが、ソースコードが隠されたソフトウエアをクライアントが使い続けることにはリスクがあるのも事実。
かつてプログラムの2000年問題が取り沙汰された時、すでに開発者の所在が不明あるいは開発会社が倒産してしまったためシステムが修正できないという状況があった。もっとも今でも、開発を委託した会社やプログラマがいなくなってしまうことは日常茶飯事で、それをリスクとして盛り込んでおかなければならなくなっている。そのためクライアントは、そういったリスクへの対策として、開発会社にプログラムのソースコード提出を求めるようになってきているのだ。
ちょうどソフトウエア業界にはオープンソース化の波が訪れていて、巨人IBMですらも同社が所有するソフトウエア特許の一部をオープンソースとして公開する動きに走っている。この背景には、ソフトウエアの技術的な進歩が鈍化して、一般大衆化(コモディティ化)してきている状況がある。現在のソフトウエア技術は誰もが便利に使える水準にまで成熟してきており、これから先は、高額の開発料で稼ぐことが難しいという読みもある。ソフトウエア業界に限らず、技術力をウリにしてきた業界では、その技術がいつか一般大衆化することにより、収益の構造を変えていかなくては生き残っていくことが難しくなっている。
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JNEWS LETTER 2006.3.9
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