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中小経営者のための銀行との付き合い方 (預金取引のコツ)
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銀行業界では2002年4月から実施予定のペイオフ制度を目前にして、優勝劣敗の構図が明確に現れている。ペイオフが実施された後に銀行が破綻した場合には、預金者自身がリスクを被ることになるため、それまでに“危ない銀行”から“健全な銀行”へと預け替えようとする動きが資産家を中心としてみられる。また、これまで一つの銀行に預金を集中させていたものを、複数の銀行に分散させる預金者も多い。
《ペイオフ解禁後の預金者への払い戻し範囲》
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2002年4月〜 2003年3月まで |
2003年4月 以降 |
・普通預金 ・当座預金 |
全額を保証 |
総預金額の中の 元金1000万円分と その利子 |
・定期預金 ・定期積金他 |
元金1000万円 とその利子 |
・外資預金 ・譲渡性預金 |
保証対象外 |
マスコミ報道の影響もあり、預金者側の立場では、ペイオフ解禁に向けた準備は整っているといえるだろう。しかし企業経営者の立場で、これからの銀行とどう付き合っていけば良いのかは語られることは少ない。銀行側が不良債権を作らないための“保身”の意味から、取引先の企業を厳しく選別する動きは加速しているため、中小零細企業や個人事業者としては、いざというときに頼れる銀行との間で良好な関係を築いておくことが急務だ。
銀行の看板とメインバンクの意味
業歴の浅いベンチャー企業では、銀行との付き合い方に関するノウハウは乏しい。そこで最初に意識するのが「メインバンク(主力取引銀行)」という言葉であり、なるべくブランド力のある銀行(大手都銀など)に口座を開設したがるものだ。
しかし「困ったときに助けてくれる銀行」という目的からすれば、大きな銀行ほど中小零細企業には冷たい。従業員数十名規模以下の会社であれば、都銀を主力取引行にするよりも、地銀や信用金庫と親しく付き合ったほうが、親身な経営サポートを受けられることは多い。
経営者が言う「困ったときに助けてくれる銀行」とは、円滑な融資を受けられる金融機関のことを指すが、そこまでの信頼関係を築くためには、資金繰りに困らない前からいくつかの準備的な付き合い方をしておいたほうが良い。
メインバンクとして付き合う銀行は、その看板(ブランド力)だけで選ぶのではなく、自分(自社)の商売の規模でも大切に扱ってくれる銀行を選ぶことが重要だ。わかりすい判断材料としては、自社側ではメインバンクだと思っているのに、渉外担当者が一度も会社を訪問してきてくれないようなら、銀行側からは大切にされていないことを意味する。
預金取引の種類と役割とコツ
開業したてのSOHOが、顧客(取引先)に対する信用力を少しでも高めようとして、わざわざ遠方にある大手都銀の支店に普通預金口座を開設するケースがある。しかし普通預金というのは誰でも簡単に開設できるため、何の信用力享受にもならないことを覚えておきたい。
<●当座預金と信用力の関係>
「信用力」という意味では、普通口座ではなく当座預金口座を持っているか否かが、一つの判断材料となる。当座預金というのは、手形や小切手の振り出しができる口座だが、これを開設するには銀行側の厳しい審査を受けなければならない。
《当座預金開設時の審査内容(例)》
・過去の取引状況についての審査
・過去の決算書の提出
・当座預金の必要性の有無についての判断
・面接による審査
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これらの資料から総合的な判断をして支店長が決裁する。
当座預金を開設できれば、その銀行が振出銀行となる小切手や手形を発行できるようになる。現金以外の信用決済取引が可能になる点で、銀行側から一定水準の「信用」が与えられる形だ。
開設時の審査は、下位銀行ほど緩く、上位銀行ほど厳しくなる。そのため小さな信用金庫に当座預金を持っている会社よりは、大手都銀の当座預金口座を持っている会社のほうが社会的な信用力は高いといえるだろう。
ただし業界によっては手形・小切手による決済を受け付けていないため、そのような場合には、優良企業であっても当座口座を持たないことも多い。逆に、当座口座を持たない会社とは新規取引をしないことが慣習になっている業界もある。
<●定期預金と自動振替サービスによる評価>
銀行から初めての融資をしてもらうためには、新規取引開始から時間がかかるのが常識。個人ローンよりも企業向け事業融資のほうが審査は厳しいのは、それだけ貸し倒れリスクが大きいため。そこで企業経営者たちは、日頃から銀行に対して取引実績を積むことを心がけている。
銀行側が過去の取引状況として重視するのは、派手な取引でなく堅実な取引の履歴だ。数千万円単位の振込みが頻繁にあっても、すぐに引き出して残高がゼロになってしまうような取引先は嫌われる。例えば、大手FCチェーンの支店が普通口座を開設して日々の売上げをプールしても、月末にはすべてFC本部の他行口座へ送金してしまうようなケースでは、銀行側は冷めた付き合いをするものだ。
銀行側が“良い取引先”として評価するのは、定期制預金と口座からの各種サービス料金の自動振替を多くしている取引先のことを指す。これは取引額(預金高)が大きいという理由よりも、「簡単には逃げない顧客」という意味合いが強い。
法人名義の定期預金は、普通預金と異なりATM機から自動出金できないようになっている。解約、出金するには必ず窓口を通すことになる。この人的なフィルターがあるから定期預金をしている法人顧客を銀行は信用する。
また普通口座から会社の水道光熱費や家賃、その他の経費を自動振替している場合も、銀行側の評価は高まる。自動振替用として活用されている口座は、常に残高があることと、その引き落とし状況から、その会社が支払いに対して真面目なのかルーズなのかが判断できるためだ。
定期預金と自振サービス、この2つを要素をあわせ持つサービスとして積立預金(定期積金)があるが、銀行に対して手堅い信用を積みたいのなら、法人名義での定期積金を長期間しておくことをお勧めする。
企業経営者が銀行と取引していく上で基本的、かつ大切なことは、派手な取引を見せようとするのではなく、地味でも真面目な印象を与える取引を長年継続させることにある。プロの銀行マンなら、その会社が信用できるか否かを預金通帳の内容から簡単に見抜けるものなのだ。
■JNEWS LETTER関連情報
JNEWS LETTER 96.12.10
<金融崩壊に備えた銀行取引を考える>
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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2002年1月11日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
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