ロボット化されるネットスーパーの物流設備と採算構造
ネットスーパーが構築する物流施設は「フルフィルメントセンター」と呼ばれ、ロボット、AI、自動倉庫システムなど複数のテクノロジーを組み合わせて、出荷作業の生産性を高めていく必要がある。そのため、「フルフィルメントプロバイダー」と呼ばれる専門業者が、クライアント企業が取り扱う商材によって最適な物流システムの構築を担当している。
イオンが千葉市に建設するフルフィルメントセンターを担当しているのは、英国の「Ocado(オカド)」という会社で、2000年から自社のネットスーパー事業「Ocado Retail」を運営する中で蓄積した技術とノウハウを、Ocado Solutionsという子会社を通して、世界の大手スーパーチェーンに対して提供している。
※イオンフルフィルメントセンター(千葉市誉田 CFC)の完成イメージ
同社が設計するネットスーパー向けのフルフィルメントセンターは、倉庫内に商品在庫を収納できるストレージボックスを格子状に敷き詰めて、ストレージ上部にあるレールをロボットが自走してピッキングすることで、5分間で50件の注文に対応することができる。
倉庫内のスペースを無駄にしないように、ストレージボックスは高密度に配置されているため、過去の注文データからAIがニッチな売れ筋商品を見つけて、ロングテールの品揃えで売上と利益率を伸ばしていくことも可能だ。これらのテクノロジーは、Ocado社が2200人のエンジニア人材を採用することと、ロボット開発会社を買収することで実現させている。
■Ocado Smart Platform(映像)
さらに、Ocado社のネットスーパー事業「OcadoZoom」では、商品配送の車両とドライバーも自社で保有することで、午前5時30分から深夜0時まで1時間単位の配達枠で当日、翌日までの宅配を実現させている。配送料は1.99ポンド(約300円)~の設定だが、配達する時間帯とスピード(最短で30分以内)による変動料金制を導入することで、配達希望時間の偏りを分散化している。
Ocadoのフルフィルメントセンターは、英国ロンドン近郊に5ヶ所あり、そこから3マイル以内(4.8km)に住む消費者を主なターゲットとしている。1回の配達は15ポンド(約2300円)以上の注文から受け付けるが、平均注文単価は平常時で110ポンド(約1.6万円)、それがコロナ禍で都市がロックダウンされた状況では140ポンド(約2.1万円)にまで上昇している。
ネットスーパー事業の採算は、従来の店舗型スーパーが投じてきた広告宣伝費と人件費を極力抑えて、その分をピッキングと宅配に必要な投資に充てることで、2~3%の営業利益を確保する構造になっている。利益率は薄いが、AIやロボットが大量の注文を処理するほど収益性を高めることができる。
フルフィルメントセンターの開発には、莫大な資金が必要となるため、自社だけで設備やシステムを運用するのではなく、同業他社にも同じ仕組みを提供する「プロバイダー事業」も兼業することで、投資資金を早期回収するビジネスモデルが構築されている。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・即日配送を実現するダークストアの正体
・コロナ禍で変化する食料品の買い物習慣
・マイクロフルフィルメントセンターの機能と役割
・ロボットが活躍する未来スーパーの形
・ネットスーパーの事業構造と採算性について
・不動産投資としてのフルフィルメント物件
・米国で開発される2時間以内配達サービス
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・JNEWS LETTER 2021.4.15
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