ゴーストキッチンの経営では、デリバリー経費が料金の3~4割を占めるため、従来の飲食店舗とは異なる採算計画でメニューの内容と単価を決めていく必要がある。そのためゴーストキッチン向けのメニューを提供するフランチャイズビジネスも登場 (JNEWSについてトップページ
ゴーストキッチンの事業開発と採算シミュレーション

JNEWS
JNEWS会員配信日 2020/12/17

 飲食スペースを持たないゴーストキッチンは、接客コストがかからない反面、デリバリー用の容器や配送費用がかかり、集客ルートもオンラインが主体になるため、従来の飲食業とは根異なるビジネスモデルを構築する必要がある。これは飲食業のデジタル革命とも捉えられて、海外では、大手のレストランチェーンも、ゴーストキッチンの注文傾向や採算構造を研究しはじめている。

まず、ゴーストキッチンで販売する料理の開発は、実店舗で提供してきたメニューをベースとしながらも、予約ポータルサイトで他店よりも魅力的な仮想ブランドを開発する。予約ポータルでは、消費者が「ハンバーガー」「ピザ」「カレー」のように料理名を検索して、自宅付近で注文できる店を探すため、サーチエンジン対策を意識することも重要で、同じカテゴリーでも、視覚的にインパクトのある料理のほうが好まれている。FacebookやInstagramに料理の写真を投稿すると、フォロアーからの注文が増えるのも特徴である。

ゴーストキッチンの収益性は、注文単価と注文件数で売上高が決まるが、料理のカテゴリーによっては、営業時間中のダウンタイムが発生する。たとえば、アイスクリームやドーナツが主体の店は、肝心のディナータイムで注文件数が伸びない。そこで実店舗では出さない新たなメニューを追加して、売上を伸ばす工夫も必要になってくる。

そこに着目したのが、包子、餃子、蒸し餃子など、アジアンフードのカジュアルレストランを米イリノイ州シカゴで経営する「Wow Bao(ワウバオ)」という飲食企業で、ゴーストキッチンの運営者向けに「DarkKitchen(ダークキッチン)」というプログラムを提供している。

このプログラムでは、Wow Baoが手掛けるアジア料理を冷凍食品としてパッケージ化して、全米各地のゴースキッチン(100店舗以上)に提供する。提携先のキッチンは、Wow Baoの料理だけでデリバリーサービスを開始しても良いし、自店で調理している料理に、Wow Baoのメニューも加えて注文単価を高める方式でも良い。プログラムへの参加は、初期費用として495ドルを払うことで、蒸し料理用の調理器具と冷凍加工された食材、トレーニング用のマニュアルが提供される。

Wow Bao Dark Kitchen program

ゴーストキッチンの経費は、食材の原価(約30%)とデリバリー費用(約30%)が売上のおよそ6割を占めるため、「注文単価×注文件数」のパフォーマンスを高めていかないと採算が合わない。たとえば、1件の平均注文単価を25ドルとして、1日何件の注文件数があれば、損益分岐点をクリアーできるのかを明確にイメージできることが重要になる。

ゴーストキッチンの採算シミュレーション機能については、Restaurant Diveのサイトが「Ghost kitchen calculator」を公開している。この中で、注文単価、1日の注文件数、スタッフ時給、家賃、食材原価、配達手数料などの項目を入力すると、年間の予想損益を計算することができる。ゴーストキッチンの収益性は、実店舗とは異なるため、どんぶり勘定ではなく、黒字化を達成するための計数管理を行うことが求められている。

Ghost kitchen calculator

《実店舗とゴーストキッチンの比較(例)》

ちなみに、米国ではデリバリー費用の平均値が25%だが、日本では今のところ30~40%と高い。そのため、米国と同じ注文単価では赤字になる可能性が高い。そのため、「安い注文単価で注文件数を増やそうとする」よりも、注文単価が5,000円以上するような高級料理をデリバリーで売る努力をしたほうが、黒字化しやすい。

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