社会距離を意識したアフターコロナの飲食店経営モデル
新型コロナの影響が最も深刻なのは飲食業界だが、営業再開にあたっても、各国の政府や自治体が定めたガイドラインに沿って、店舗の仕様変更を求めている。
その中でも共通しているのは、来店人数の制限と、顧客同士や従業員との間でソーシャルディスタンス(社会的距離)を保った店内レイアウトへの変更である。
米テネシー州が作成している、レストラン向けのコロナ対策ガイドラインでは、来店客を座席数の50%以内に制限して、テーブルの間隔は6フィート(約1.8m)以上離すこと、1つのテーブルは6名以内、各テーブルに置く調味料セットは撤去、生演奏の禁止、サラダバー・ドリンクバー、ビュッフェスタイルの料理提供も中止、顧客を入れ替える度にテーブルや椅子を消毒する、という厳しい内容になっている。
■Restaurant Guidelines(米テネシー州)
人との間隔を6フィート(約1.8m)以上に保つことは、米国疾病予防管理センター(CDC)が示している指針で、それが難しい場合には、座席をパーティションで仕切ることが推奨されている。来店客が隣席を気にせずに、安心して食事ができるパーティションの設置は、今後のレストラン店舗にとって必須アイテムになる可能性がある。具体的なイメージとして、日本のラーメンチェーン「一欄」が以前から導入している「味集中カウンター」は、米ニューヨークでも注目されている。
■米ニューヨークの一欄(動画)
米国では各州が、ロックダウンからの経済再開に向けて、飲食店の営業ガイドラインを示しているが、その中ではテーブルの間隔、店内の収容人数、パーティ(宴会)の人数制限などを定めており、そのルールに則った営業形態に変えていく必要がある。
《飲食店再開のガイドライン(米国)》
○ジョージア州
・店内の収容人数は500平方フィート(46平米)につき10人
・パーティは6人以内。
・テーブルの間隔は6フィート(1.8m)以上
○テネシー州
・店内の収容人数は座席数の50%
・パーティは6人以内
・テーブルの間隔は6フィート(1.8m)以上
・バーカウンターの使用は禁止
○アラスカ州
・店内の収容人数は座席数の25%
・パーティは家族のみ
・テーブルの間隔は10フィート以上(約3m)
・待合スペースは予約客のみ利用可能
○テキサス州
・店内の収容人数は座席数の25%
・パーティは6人以内
・テーブルの間隔は6フィート(1.8m)以上
・バーカウンターの使用は禁止
・待合席も6フィート以上の間隔を空ける
各州のガイドラインは強制的なものではないが、店舗経営者は、このルールを守ることにより、顧客や従業員の中から感染者が出た際に訴訟で負けるリスクを軽減することができる。当然、コロナ前よりも売上は落ちるため、店内での飲食とテイクアウトを合わせて、黒字が見込める経営スタイルを考えていかないといけない。
店内の食事は完全予約制として、少人数の客に限定した飲食サービスを提供するのは一つの方法だが、消費者の恐怖心を払拭するまでは、予約を集めることに苦戦するだろう。その指針として、米国と欧州を中心に世界20ヶ国で約6万店のレストラン予約を管理する「OpenTable」では、世界でパンデミックが拡大して以降、前年の同月日と比べて、予約件数がどれだけ減少しているのかを集計したデータセットを公開している。
そのデータによると、2020年2月の時点では予約の減少傾向は、ほとんどみられなかったが、3月10日に-18%、3月の23日以降は、どの国でも前年比で-100%の予約減少率となっている。この数値が改善されていかない間は、日本でもレストラン予約の需要は少ないとみるのが妥当だろう。
■The state of the restaurant industry(OpenTable)
OpenTableでは、予約が獲得できない状況の中でも、レストラン業者が顧客との関係を維持して収益を確保する方法として、テイクアウトや宅配サービスを立ち上げることに加えて、ギフトカードの販売を推奨している。
欧米では、50ドルの前払いカードを購入すると60ドル分の食事ができるようなバウチャー(割引)システムが普及しており、コロナの影響を受けている期間は、テイクアウトと来店の両方で利用ができ、友人知人への譲渡も可能なギフトカードを販売する方法が、店頭で代金決済をする手間を省いて、安定収益を確保することに繋がる。
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