農業法人に向かう投資マネーの特徴/農業ファンドの仕組み
農業起業者にとっての追い風は、公的な助成金、低利の銀行融資、農業ファンド、提携企業からの出資など、資金調達の選択肢が広がっていることがある。日本政府は、新規就農者向けの支援事業として年間およそ200億円の予算を投じている他、JAバンク、地方銀行、信用金庫などの金融機関でも、農業ファンドを組成して、将来有望なビジネスモデルを展開する農業法人への出資を行っている。
農業ファンドは、「農業法人に対する投資円滑化法」という法律に基づく制度で、国の資金で運営される日本政策金融公庫と、民間の金融機関とが共同出資する形で投資ファンドを設立する。ファンドは、6次産業化などの有望な事業計画を持つ農業法人を募集、審査を通過した法人に対して出資を行うものである。
具体例として、JAグループと日本政策金融公庫の共同出資によって設立されたアグリビジネス投育成株式会社(アグリ社)では、JAバンクを介して「アグリシードファンド」の出資先となる農業法人を募集している。
資金調達をしたい農業法人は、JAバンクの窓口や担当者を介して出資の申し込みをする。現在の財務内容や事業計画、収益の見通しなどから審査が行われ、それに通過すれば、1社あたり1,000万円までの出資が実行される。これは融資ではないため、月々返済の必要は無く、アグリ社は、議決権の無い株主の立場で決算書をチェックしながら、毎年の収益状況に応じた配当を受け取る仕組みになっている。
また、食に関連する企業が、農業法人に対して出資を行うケースも出てきている。
モスバーガー店舗を展開する株式会社モスフードサービスでは、長野、熊本、千葉、静岡などにある、小規模な農業法人(従業員10~20名規模)と共同出資する形で新たな農業法人を設立して、ハンバーガーの調理で使うトマトやレタスなどの生産を行っている。消費者に対して、安全で美味しいハンバーガーを提供するには、食材の生産から直接関わることが大切という、経営判断によるものだ。
農場に対する出資のスキームは、設立する1法人あたりの資本金3,000~4,000万円に対して、モスフードが2,000~3,000万円の出資をして6~7割の株式を保有するが、議決権ベースでは50%未満に抑えられている。これは、農地の所有が認められた農業法人(農地所有適格法人)対して、法律による出資規制があり、農業に直接従事しない企業の出資比率は、50%未満と決められているためである。
そのため、中小の農業法人にとっては、大手企業からの出資を受けながらも、独自の経営方針を進められる利点がある。さらに、事業規模の拡大を狙うのであれば、農業法人が子会社として株式会社を設立して、株式上場を目指す事業計画を立てることで、ベンチャーキャピタルからの資金を調達することも可能になってきている。
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