急増する廃校(旧小中学校)を再利用するビジネスモデル

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JNEWS会員配信日 2017/11/30

 文部科学省では、各地方自治体で廃校になった旧小中高校の物件を、ローカルビジネスを立ち上げたい事業者に仲介する「みんなの廃校プロジェクト」を2013年から立ち上げている。

もともと、公立学校は国の補助金(国庫金)を使って整備されているため、学校以外の用途に転換するためには、自治体が国庫金を返納しなくてはいけない規則になっている。しかし文科省では、年間500件ペースで増えている廃校の再利用を促進するため、一定の要件を満たせば、自治体は国庫返納をせずに、簡略化された手続きで、廃校を民間事業向けの施設として貸借・売却できるようにしている。

みんなの廃校プロジェクト(文部科学省)

既に同制度を利用して、全国では廃校を活用した事業プロジェクトが多数立ち上がっている。地域住民の生活に役立つ、老人福祉施設、放課後クラブ、文化施設などは定番だが、それ以外でも、他県からの就労者や人材育成を目的に若者を呼び込めるような事業は採用率が高い。

 ロボットやハイテク機器の開発拠点としても、過疎地の廃校は注目されている。
開発実験には広い敷地があったほうが良く、騒音や、万が一の事故に備えて人口が密集していない立地のほうが好都合なためである。その中でも、ドローンの開発は飛行区域の制限が少ない過疎地が適している。

業務用ドローンの開発製造を行っているサイトテック株式会社では、山梨県身延町にある旧中富中学校を、本社と技術開発の拠点としている。ドローンの飛行実験には、屋内と屋外の両方で広いスペースが必要だが、学校には体育館とグラウンドがあり、その条件を満たしている。また同施設では、これからドローンビジネスに参入したい企業担当者や個人を対象に、ドローンの操縦、組立、メンテナンスに関する実技講習も行っている。

サイトテック株式会社

その他にも、茨城県河内町では、ドローン管制システムを開発するアイ・ロボティクス社に対して、2017年3月に閉校した旧金江津中学校を5年間無償で貸与する契約を締結している。これにより国内で最大級のドローン複合施設「ドローンフィールドKAWCHI」が2017年11月にオープンした。

この施設は、都心から80分の立地で、旧教室を活用したドローン開発ラボと、屋内飛行ができる体育館に加えて、屋外でも利根川上空を往復10kmにわたりテスト飛行させることができる。さらに、町内の公民館を改装した、170人まで収容可能な会議場、宿泊施設まで用意されている。

ドローンフィールドKAWCHI

茨城県河内町の人口は、平成7年には11,000人だったのが、平成28年には 9,400人、さらに将来推計では、25年後に 5,800人にまで減少することが予測されている。古くから稲作農業が基幹産業の町であり、若者が働ける仕事が少ないことが人口減少の要因にもなっている。そこで、東京から約50キロの立地を活かし、都心では規制が厳しいドローン飛行に適した場所を提供することで、関連の企業を誘致して、ドローンを新たな地場産業に育てたいと考えている。

 ドローンに限らず、広いスペースを必要とする製造業や開発系のスタートアップ企業にとっても、地方をビジネスの拠点にすることは、不動産コストが安く、自治体の支援も受けやすい等の利点がある。拠点とする立地についても、東京から距離が近いエリアや、高速道路や空港から近いエリアなどで、意外な穴場を探すことはできる。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます記事一覧 / JNEWSについて

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