急成長する配車アプリ「Grab」のビジネスモデル
JNEWS会員配信日 2018/7/1
米国では「Uber」や「Lift」などのライドシェアリング業者が、独自のサービスを展開することで、タクシー業界と真正面からの戦いを挑んでいる。しかし、州や都市によっては、ライドシェアリングを法律で禁止しており、すべての地域で合法的に行えるわけではないことが、事業の成長にブレーキをかけている。
それに対して、他の国ではタクシー業界との親和性を保ちながら、ライドシェアリングの規制緩和にも適応した「配車サービス」が成長している。シンガポールを拠点に、マレーシア、フィリピン、タイ、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、カンボジアの東南アジア8ヶ国で勢力を拡大している配車サービスの「Grab(グラブ)」は、2012年のサービス開始から2017年までに、5,500万人以上の利用者を獲得している。
アプリ上で、乗車場所と目的地を入力すると見積料金が表示されて、最も近い位置にいるタクシーを探すことができる。新興国では、悪質なタクシードライバーが多いため、流しの車両を拾うよりも、事前に見積料金がわかる配車アプリが支持される土壌がある。運賃の支払いは「GrabPay」という、独自の電子決済機能によって行われため、ドライバーとの間で現金授受のトラブルが起きる不安もない。
Grabでは、タクシーよりも3割程度安く利用できる「GrabCar」という、一般ドライバーによるライドシェアサービスも展開しているが、こちらも予約前に見積金額が表示される固定運賃制で、渋滞や道に迷っても料金が高くなることはない。
ただし、想定される固定運賃制の問題点として、ドライバーにとって短距離の仕事は儲からないため、アプリから割り当てられる仕事の中で、長距離の案件だけを選ぼうとするケースが考えられる。この対策として、Grabは「Minimum WeeklyAcceptance Rates(AR)」という指標を設けて、1週間あたりの配車受け入れ率を管理している。この数値が低いほど、アプリの配車依頼を拒否する割合が高いことを意味する。
ARが30%を下回るドライバーにはペナルティが与えられて、運賃の売上から徴収される手数料率(通常は20%)が40%になり、実質的な収入が目減りする。逆に、ARが90%を超す(配車の拒否率が低い)ドライバーに対しては、インセンティブが与えられて、1週間トータルの収入は、単に乗車距離の長さだけでは確定しないシステムになっている。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます → 記事一覧 / JNEWSについて)
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