JNEWS会員配信日 2015/9/20
ここ数年で「FinTech」と総称される ITサービスが増えている背景には、金融機関のオンライン化が加速していることが関係している。地域の銀行や信用金庫でもネットバンキングのサービスを充実させているが、これは、オンライン専業の銀行に顧客を奪われないようにする策として避けられない。
ネットバンキングの口座には、利用者がIDとパスワードによってアクセスできるが、この仕組みを利用したのが家計簿アプリなどにみられる「口座アグリゲーション」の機能である。
利用者が登録したIDとパスワードで、アプリが銀行、証券会社、クレジットカード会社などのオンライン口座にアクセスして、月々の入出金や買い物歴などのデータを自動的に収集することで、電子化された家計簿が作成されていく。
データは自分が保有している複数の口座から取得できるため、個々の口座を別々にチェックするよりも、家計簿アプリで一元的に管理したほうが便利で、無駄に費やしている支出の項目や、貯蓄の平均利回りなども把握しやすくなる。アプリには家計の分析機能も用意されているが、データをパソコンに取り込めば、エクセルなどでさらに詳しい分析をすることもできる。
口座アグリゲーションは、複数の金融機関に分散されたデータを自動で取り込める便利な機能である反面、セキュリティに対して二つのリスクを抱えている。
一つは、各口座のIDとパスワードが盗まれることへの技術的なリスクで、これについては、アプリ側で安全機能を強化していくことと、金融機関側でも、ログインパスワードと取引パスワードを分けることで、万が一、ログインパスワードが他人に盗まれても、不正な取引が行われないようにする策が講じられるようになってきている。
二つ目のリスクは、プライバシー面の問題で、買い物の履歴や金融資産に関する個人情報が、アプリ側には筒抜けになってしまうことである。家計簿アプリの収益モデルとしては、基本的な機能を無料で提供して土台となるユーザー層を作り、さらに高度な機能を有料で提供する課金ビジネスと、広告掲載やマーケティング目的のキャンペーンを展開していくことが考えられている。
しかし、消費者にとって“お金”に関するデータは最も重要な個人情報であり、銀行口座と連携することまでは求めてない人も少なくない。そのため、口座アグリゲーションが、逆に家計簿アプリ普及の足かせになるという側面もある。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です)
■JNEWS会員レポートの主な項目
●銀行サービスを進化させるFinTechの輪郭
●銀行口座アグリゲーションの可能性
●家計簿アプリが引き起こす金融再編の脅威とリスク
●オンラインバンク化が招く銀行からの預金流失
●海外と日本では異なるFinTechの方向性
●退職金の運用、相続対策に向けたFinTech開発
●ソーシャルレンディングによる資金融資と仲介システム
●金融機関の権益を奪い仮想通貨が巻き起こす送金革命
●金融業界の勢力図を塗り替えるネット銀行の台頭と顧客開拓力
●保証人制度改正で浮揚する新たなマイクロ金融の取引モデル
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2015.9.20
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