JNEWS会員配信日 2013/11/21
「フリーミアム(Freemium)」という言葉が流行ったのは2006年頃からのこと。基本的なサービスは無料で提供して、それに関連した付加機能などで収益化するビジネスのことを指している。
いまでもフリーミアムは健在で、ネットユーザーの大半は、無料のサービスやコンテンツのみを利用して楽しんでいる。一方、フリーサービスを提供する事業者は、どこかでコストを回収して収益を上げていく仕組みを作らなければならないが、その方法は試行錯誤が繰り返されている。
《フリーミアムのビジネスモデル例》
●有料アイテム課金型
…無料ゲームやアプリの中で有料のアイテムや機能を課金する。
●時間制限型サービス
…無料で利用できる日数を決めて、それ以降は有料プランへ移行しないと機能が 使えなくなるようにする。
●機能制限型サービス
…無料で利用できる機能は一部に限定して、フル機能を利用するのは有料とする。
●人数制限型サービス
…法人向けのサービスで、無料で利用できる人数を限定して、それよりも利用人 数が多くなれば有料プランへと移行させる。
しかし、ネットユーザーの中には、無料サービスだけを使い回すことが得意な“フリーライダー”と呼ばれる人達が多く、当初の目論見よりも収益化が上手くいかないケースも多数ある。
ネット上のフリーサービスは、アプリやコンテンツを無償配布するコストがかからないため、安易に実施することはできるが、難しいのは、ユーザーの素性を掴みにくいことだ。リアルな店舗ならば、無料サービスを目的に訪れる客の、容姿や言動から、ターゲットとしている客層とのズレを判断できるが、ネットは顔が見えないため、将来の収益に結びつかないフリーライダーばかりを集めてしまう懸念がある。
無料とはいえ、ユーザーからの問い合わせ、苦情、サポートなどの対応にコストはかかるため、いつまでも黒字になる見込みのないサービスを継続していくことはできない。そこで最近は、フリーミアムのビジネスモデルが軌道修正されるようになってきた。
【事業者向けクラウドサービスの価格政策】
オンラインでサービスを提供する事業者にとって価格政策は難しく、スタートの時点では、まず無料サービスとしてユーザーを集めてから、徐々に有料コースへ誘導しようとするケースは多い。しかし、無料であることが逆に、「お金を払いたい」と考えている優良顧客を遠ざけていることもある。
「Chargify」は、中小企業や個人の事業者向けに、クラウド型で代金の請求、決済、入金や遅延の管理までを行える会計システムを提供するサービスを2009年から開始した。
当初は、フリーミアム型のビジネスモデルを採用し、請求書を発行する顧客数が50件以内までは無料、51件以上になれば有料(月額45ドル〜)という料金体系を設けたが、有料コースへ申し込む利用者はほとんど無く、会社の存続が危ぶまれる事態にまで陥った。
《Chargifyのフリーミアム戦略(失敗例)》
そこで料金体系を根本的に見直し、最も安いコースでも「月額65ドル(顧客数が20件以内)」とすることで、現在では 1,100社の契約を獲得している。無料コースを廃止したことへの対策としては、各機能を実際に操作して確かめられるテストアカウントの発行と、契約から30日以内に解約を申し出た場合の返金保証制度を設けている。(※以下が見直し後の料金体系)
商品が「顧客への請求業務に使うシステム」のため、契約者にとっては、無料で使えることよりも、機能のバージョンアップが継続的に行われ、サポート体制がしっかりしていること、会社自体が途中で消滅してしまわないことなどが求められ、適切な料金はしっかりと払う意志のある顧客(事業者)にターゲットを絞り込んだことで、経営は安定した。
他のオンラインサービスでも、複数の料金プランを設けて、その一つを「無料コース」とすることで、集客に繋げようとしたケースは多いが、無料コースの弊害として、幾つかの問題点がわかってきた。
●フリーミアムに露呈する問題点についての解説
●フリーミアムが成功する条件と判断基準
●無料アプリの健全なアイテム課金モデル
●子どもの代金をフリーにするレストランの集客モデル
●有料サブスクリプションとフリーミアムの融合モデル
●定期購買制で躍進するサブスクリプションショップの成長軌道
●タダ飯をふるまうレストランと食い逃げをする客の駆け引き
●キッザニアの成功戦略にみるエデュテイメント事業の仕掛け方
JNEWS
LETTER 2013.11.21
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