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ソーシャル金融の誤解と 膨張する社会貢献マネーの裏側 |
written in 2008/12/22
ヘッジファンドや企業買収など、世の中が非情な営利ビジネスに傾倒していった反動として、最近の消費者が関心を示しはじめているのがソーシャル(社会的)な目的や使命を掲げたサービスである。それは金融業にも言えることで、従来の消費者金融とは違ったP2P(ピアツーピア)型のソーシャル融資サービスが欧米で伸びてきている。
その代表例といえるのが、英国の「Zopa(ゾーパ)」と米国の「Prosper(プロスパー)」というオンラインサービスで、過去の記事でも何度か紹介している。融資を希望する個人のユーザーが、必要な資金の額、資金の用途、金利の希望レート、返済期間などの条件をサイト上に提示(投稿)して待機していると、貸し手となるユーザーが、自分が貸し出せる金額を入札していくのだ。借り手の融資希望額が1万5千ドルであるのに対して、1千ドルずつ15名の入札者(貸し手)を集めることも可能。サービスの運営者であるゾーパやプロスパーは、自らが融資するのではなく、借り手と貸し手を仲介することで成立した融資額の約1%を手数料として得ている。
借り手の投稿に対して、入札者(貸し手)がたくさん集まるか否かは、情報公開する借り手の信用状況(年収証明や延滞歴の有無)と、資金の用途(どうして資金が必要なのか)を説明したメッセージが貸し手の心に響くかにかかっている。マイホームのリフォーム資金を借りるにしても、家族の様子を詳しく説明するほど入札者は増えるし、ハリケーンなどの災害復旧で資金が必要になった人にも貸し手は温情的な反応をしやすい。貸し手は、信頼できる相手、応援したい相手を選んで小口の融資をできることからソーシャル(社会的な)金融と呼ばれている。
《P2P型ソーシャル金融サービスの仕組み》
ただしこの手のサービスが理想的な金融サービスと言えるかには疑問がある。というのも、借り手と貸し手はやはり「利子」によって結ばれている営利の関係で、しかも貸出金利の平均は10%前後と、特別な低利で融資されているわけではない。やはりこれは新種の消費者ローンとして捉えておくべきで、“ソーシャルサービス”という謳い文句に飛び乗ることには危険がある。そのため金融当局がソーシャル金融サイトに対して監視の目を光らせる動きも出始め、2008年12月の時点でプロスパーは新規の融資を停止する事態に陥っている。
本当にソーシャルな支援ということであれば、利息無しで資金を提供するべきだろうが、貸倒れのリスクも考えれば無利子による金融サービスなど成り立つわけがないと思える。ところがそれを可能にしているのが寄付基金の仕組みである。
(ビジネスモデル事例集一覧へ)
●宗教観に基づいたビジネスの正当化とイスラム商法
●利子を使わずに販売益と手数料で稼ぐビジネスモデル
●P2P金融は新たなソーシャルサービスになれるか?
●P2P型ソーシャル金融サービスの仕組み
●増やしてから支援する寄付基金のビジネスモデル
●教育寄付金による資金の循環システム
●宣伝広告から社会貢献マーケティングへのシフト
●ピンクリボン活動による社会貢献マーケティングの展開方法
●社会貢献市場を拡大させる財テクノウハウ
●欧米の名門大学にみる本物の奨学制度と同窓会組織の価値
●資産運用の指南で年収2千万円の花形職業が生まれる背景
●寄付金集めのプロとして活躍するファンドレイザーの役割
JNEWS LETTER 2008.12.22
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●クレジットカードのポイント特典は誰が払っているのか?
●消費者ローンの失墜で見直される質屋の商売とモノの価値
● イスラム商法に学ぶ営利ビジネスの健全化と懺悔の方法
●イザという時に使えない銀行預金と電子社会の口座封鎖
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