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スーパーカーを切り売りする
ビジネスモデルの研究
written in 2008/5/5

 行楽シーズンの連休ともなれば、どこへ旅行するにしても高速道路の渋滞や空港での行列を覚悟しなくてはいけない。これでは静養ではなくて疲れに行くようなものだと感じている人は多いだろう。一方、米国ではプライベートジェット機で出張や家族旅行を楽しむ人達が増えている。といっても、超一流のセレブや大富豪ではなくて、中小企業のオーナーや大企業に勤める上級管理職の話である。ジェット機とまではいかなくても、リゾート地へ旅行をするのにマイカーではなくて自家用のヘリコプターやクルーザーで移動する人達もいる。

随分とリッチな話だが、彼らが夢の乗り物を自分のものにしているのは「分割所有」という方法であることが多い。この方法であれば、特別な富豪でなくてもジェット機やクルーザーを手に入れることが可能になっている。

ひと昔前には数十億円したビジネスジェット機が、いまでは数千万円でも購入できるようになっている。いくら何でもそれは安すぎるのでは?と思うかもしれないが、それには二つの理由がある。一つはジェットエンジンやコクピット内の電子機器の技術革新によって軽量で安価な小型ジェット機(6人〜8人乗り)が100万ドルから400万ドル(1億〜4億円)で購入できるようになったこと。もう一つはその飛行機を複数のオーナーで分割所有することによって、一人当たりの購入金額を数千万円台にまで下げることが可能になっているためだ。これなら高級マンションを購入する程度の予算でジェット機のオーナーになることができる。欧米ではこの分割所有方式が普及してきたことで、ビジネスジェットの市場が急成長していて、機体メーカーでは大量の受注残を抱えているという状況。

世界では2万機以上のプライベートジェット機が所有されているが、その中で日本人の所有率は1%にも満たない。そのため関連のビジネスについて意識されることは少ないが、それは間違いだ。世界の富裕層に日本へ訪れてもらうためには、いまやプライベートジェットを受け入れる空港の整備が欠かせない。しかし日本の主要空港ではビジネスジェットが離発着できる枠が少ないばかりか、空港使用料がバカ高いのである。これでは日本が世界の富裕層マーケットから取り残されてしまう。

多くの日本人にとって人生で最も高い買い物といえるのはマイホームだろう。しかも30年近いローンを組んで元金の倍近い返済をしている。とてもそれ以上の贅沢品など購入できる余裕はないことから、数千万〜数億円もする商品を売るための市場は国内で積極的に開拓されてこなかった経緯がある。しかし大衆的な商品が売れなくなる一方で、夢や憧れを実現できるような高級商材に対する購買意欲が高まっていることから、それを実現させるための方法として、プライベートジェットの話に限らず、“分割所有”や“共同所有”という売り方の研究を進めていくべきだろう。
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この記事の核となる項目
 ●レンタル・リース・共同所有の違いについて
 ●分割オーナーシップを成り立たせる裏ワザの発想術
 ●利用権を切り売りする分割所有ビジネスのスタイル
 ●フェラーリ共同利用の分割プログラム
 ●一口の競走馬オーナーを成り立たせるビジネスモデル
 ●一週間分の所有権を購入するタイムシェアリゾート
 ●週単位の所有権を与えたタイムシェアリングの仕組み
 ●リゾート施設のタイムシェア仲介と交換ビジネス
 ●自家用ジェット機の販売に学ぶ分割オーナーシップ制度
 ●ヨットの世界に学ぶ相乗りオーナー制度の仕組みと問題点
 ●社長が新型ベンツに乗り換えられる理由とクルマの所有形態
 ●モノを売ることから転換する脱物質化ビジネスモデルの胎動
 ●顧客を「オーナー」と呼ぶことで生み出せる商機と新ビジネス


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JNEWS LETTER 2008.5.5
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